a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

1970年代 普通 (好みで)

The Yakuza (1974) - 文化の美しい衝突を観る。

Sydney Pollack監督。 いい映画であった。風呂場での殺人シーンが凄いと思う。魚のごとく刺すという比喩が似合いそうなそのシーンは、他の暴力的な映画のどこにも観たことがなかったので、久々にスリルを味わった。 「道」という単語にはさまざまな種類の道…

Death in Venice(1971) - 美しい白粉。

Luchino Visconti監督。 風景をなめまわすような主観ショットが印象的。真理や人間的尊厳を音楽として追究する中で、ベニスで出会った少年の絶対的美に出会ってしまい、その美を自らの哲学に統合できずに居る。なぜなら主人公は絶対に老人であり若さは戻らな…

The China Syndrome(1979) - まじめな映画を観る。

James Bridges as director 本作は主人公が孤独だから成り立つ。孤独な人間は周囲に協力が求められず、最終的には一人でなんでも解決しようとする。そのため、最後には主人公は具体的にテロ的行動に出たのであって、実力行使しようとする会社側との戦闘が盛…

The Holy Mountain (1973) - 「映画なんて観るな」と映画のラストで説教する非凡さに対して。

Alejandro Jodorowsky as director 『エル・トポ』に似た世界を踏襲しながらも、アイディアをさらに膨らませ、映画ならではの表現を沢山提示した作品である。映画鑑賞する上で更なる鑑賞を触発される。 初めに目を引いたのが、人間から出る体液がいかにカラ…

ALL THAT JAZZ (1979) - 人生への愛を観る。

Bob Fosse as director 一瞥しただけでは混乱するような、非日常的なモンタージュを使う。そのため、目が慣れるか、二順目をしたときからがこの映画は面白い。そう、かなり複雑化したモンタージュを使用しているのである。死後の天使と思わしき存在と対話し…

Taxi Driver (1976) - すばらしい夜景を観る。

Martin Scosese as director 70年代のN.Y.を撮り、ベストな夜景を観せてくれる。その夜景のきれいな事、非常にすばらしい。『ポンヌフの恋人』がフランスの夜景でno.1の描写力を持つとすれば、本作はアメリカの夜景でno.1の描写力であろう。

The Conformist (1970)- 画面の対称性を観る。

Bernardo Bertolucci監督。 主人公と教授という二つの軸で進行するかのように見えるが、実際には主人公の妻と教授の妻という別軸が機能している。一方、画面の対称性を意識した描写を心がけており、それぞれのショットに綿密な検討の跡を見ることができる。…

El Topo (1970) - Therapy Picturesを観る。

Alejandro Jodorowsky監督。 監督の話すことにはtherapy picturesと云って、社会的なものごとへの絶望を救済するような映画が求められている。本作はまさにそれをストイックに実行したものであり、映画人としてのかくあるべき姿を示している点において普遍的…

La Nuit americaine (1973) - 映画の愛にあふれるために観る。

Francois Truffaut監督。 映画世界の中に監督のにおいのする映画と、しない映画。もう近年の映画一般ではめっきり監督のにおいがしなくなり、CGによる人工的なにおいしかしない。プラスチックが地球の環境に良くない様に、CGばかりを観ていては映画を感受…

Une Belle Fille Comme Moi (1972) - 色情症のファムファタルを観る。

Francois Truffaut監督。 出演者の表情と個性を大切にして、それを最大限に活かす映画を撮るということで、Francois Truffautは監督の中でも随一の志を持っている。但し、即興ではない。細かく腕の先の指の位置にまで注文をつけるまでに気を配った上での、個…

Close Encounters of the Third Kind (1977) - ワクワクさせられるストーリーの醍醐味を観る。

Steven Spielberg監督。 John Williams音楽。 最終的に宇宙人と対面することになる、そこまでのプロセスが非常に良い。ストーリーは一般に、一番大切な事を最後の最後にはじめて開示するように持って行く。本作はその教科書。一度船体を観たと思ったら、しば…

The French Connection(1971) - 映画の快楽を提供する秀作を観る。

William Friedkin監督。 映画の快楽とはまさにこの映画の提供する時間のごときものである。主人公が捜 査官であるとか、アメリカにフランスのマフィアが攻めてきているという主題と は快楽は関係しない。捜査官とマフィアの物理的な距離感を、きわめて忠実に…

Conical Intersect (1975) - 分解されゆく建物、その面白さを観る。

Gordaon Matta-Clark監督。 同年のパリ・ビエンナーレのために製作された作品を、映像記録とした作品。 ビルをひとつ解体することになる。半円状に切り取ったり、重機で切りくずしたりして、曲がった円錐のような形を作り上げる。その過程を記録しているので…

Splitting (1974) - 真っ二つになった、可哀相な家を観る。

Gordon Matta-Clark監督。 本作を観た場所は東京都内の美術館であったが、驚くことに本作の映写場には誰もいなかった。美術館にはある程度人は断続的に入っていたのに、この作品については、私が観ている間に人が入ってくる気配すらなかった。 ある家が、立…

Clockshower (1973) - 時計台の上でシャワーを浴びる様を観る。

Gordon matta-Clark製作 本作を観て思い浮かんだのは、『ルパン三世カリオストロの城』に登場した伯爵のラストシーンである。時計台の針の上で、なにかをするという発想が非常に似ている。 はじめ、時計台の台が画面いっぱいに映し出される。すると、左下か…

Fresh Kill (1972) - スクラップされる車の取り方の違いを観る。

Gordon Matta-Clark製作。 芸術家の記録映像として一般的に認識されているので、カテゴリーを映画とは分けようかとも考えた。しかし、映像作品はすべて「映画」の範疇として書くことが、逆に新たな切り口を生むことにもなると考えている。 車がブルドーザー…

The Crippled Masters (1979) - 片輪の主人公を観る。

Joe Law監督。 常識に囚われないという意味で、本作はあらゆる映画の上を行っている。主人公は、冒頭で前触れもなしに両腕を切り落とされ、半死半生で街をさまよう。ここで、この俳優が本当に両腕が無いのか私はいまだに不思議なのだが、どうも本当に両腕が…

Barry Lyndon (1975) - 典型的な悲劇の変遷を観る。

Stanley Kubrick監督。 典型的な悲劇のストーリーである。しかし、伝記物のテイストにしてその主人公が死ぬまでを看取るような、ごく普通のことを監督は描写していない。決闘によってのし上がった主人公が、決闘によって片足を打たれて怪我をして、故郷に退…

幸せの黄色いハンカチ(1977) - 映画の日向。

山田洋二監督。 映画は 、もし 高倉健は倍賞千恵子 それは圧倒的に日向であり、日陰ではないのだ。

Mad Max (1979) - Mel GibsonとJoanne Samuelのベストカップル具合が伺える作品。

George Miller監督。 Mel GibsonとJoanne Samuelのベストカップル具合が伺える作品。 それはそれとして、撮り方に斬新さが多かった作品。カメラは「制限空間」を創出するものであるが、あまり空間が制限されているような感覚がしなかった。これがカメラワー…

The Concorde...Airport'79 (1979) - グランドホテル形式は墜落したようだ。

David Lowell Rich監督。 コンコルドという航空機は見慣れないが、以前就航していた航空機の一種である。コンコルドの着陸滑走路に突然と気球が飛び出してきたり、突然とミサイルが飛んできたりと、どことなく間が抜けた構成である気がしないでもない。とい…

A Clockwork Orange (1971) - クラシック音楽が映画と結婚できた、希少な作品。

Stanley Kubrick監督。 クラシック音楽をまともに使いこなせる監督は、やはりKubrickぐらいであった。他の多くの監督は、クラシック音楽からあまり多くを学ばないようである。一度しっかりとKubrickの音楽使いのセンスを見習わない法はない。たとえKubrickが…

Airport’77 (1977) - 飛行機が沈んでしまうという、斬新な観点の映画。

Jerry Jameson監督。 初めからほぼ全て、右から左へのパンをしてばかりで驚く。はじめの5分ほどは、ショットのほとんどがパンで、対象は画面右から画面左へと運動している。 映画のscreenplayにおいては、例えば鞄がストーリーの可能性であることを描写しや…

Airport (1970) - Distribution d’ensembleのなかなかな映画。

George Seaton監督。 Jean Seberg、Helen Hayesなど有名な役者揃い。Jacqueline Bissetは本作後あたりからがより有名になっただろうか。本作のような構成をensemble castと英語で呼んでいるそうだ。明らかにフランス語源でまざっていて、気持ちのわるい単語…

Last Tango in Paris (1972) - 空間感覚が超人じみていると感じる。秀作。

Bernardo Bertolucci監督。 公開4日で上演禁止になるという映画は、『黄金時代』のブニュエル以来にあまり無いのではないだろうか。本作のBertolucciの空間感覚は、私にとっていつも驚嘆の対象である。Marlon Brandoの今際の言葉は「Our children …」である…

Tony Arzenta (1973) - こんな贅沢な映画、なかなか無い。

Duccio Tessari監督。 興味深い点として、配役のRichard Conteがあげられる。主人公の敵にしてマフィアのボスという役であるが、彼は『ゴッド・ファーザー』で主人公を裏切り暗殺しようとしたバルジーニを演じている。どちらも主人公をもっとも追いつめたボ…

ルパン三世 カリオストロの城(1979)- こんなエンターテイメント他にない。

宮崎駿監督。 アニメという手法が他のあらゆる映画と一線を画す優れた技法は、跳躍の描写である。本作はあまりにも有名なので作中の例を挙げてしまうと、塔から塔への跳躍などである。 ただし、本作の跳躍はいわば「王の跳躍」である。どの他のアニメよりも…

Breakout (1975) - 飛行機を飛ばし、なかなか面白いと思う映画。

Tom Gries監督。 出演Charles Bronson、Jill Irelandら。 実際に飛行機を飛ばし、ヘリコプターを飛ばし、実写でリアルに脱獄をはかっている良い映画。全体的に荒いのだが、逆にいえば気張らずにユーモアを交えて製作されている印象があり、良いなと思うので…

Joe Kidd (1972) - 続・荒野の用心棒 (普通のウエスタン)

John Sturges監督。 悪役のRobert Duvallは、God Fatherシリーズの弁護士役で有名である。 チャマという羊飼いにまつわる話。資本を後ろ盾に弱者を搾取しようとする資本家、つまり地主を悪者にする話である。 機関車で建物に突っ込み、敵を射撃するシーンが…

The Mirror (1975) - 人間の罪を暗喩する、母子と自叙。

奥行きを最大限に活かした撮影法。時々奥行きの途中で横へと移動するが、その後はまた奥へと移動することが多い。それか奥から手前へとやって来て、近位にて水平に横移動して、また奥へと歩いていくパターン。また、観客の視線を近位から遠方へと動かす意図…