a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

2010年代 普通 (好みで)

Nymphomaniac (2013) - モザイクのようなバラバラの編集と、役者の技術の粋を観る。

Lars von Trier監督。 この監督は、本当にさまざまな映像技法を知っているのだけれど、その技術はいずれも完璧な水準とまではいかない。例えば音楽にしては、冒頭でKubrickの『アイズ・ワイド・シャット』と同じ曲も使ったが、その作品のように映像にマッチ…

The Turin Horse (2011) - 環境を巻き込んで撮るという芸当。

Tarr Bela監督。 移動する被写体を、シームレスな映像として延々と撮影する。それがTarr Belaの映画の「文法」である。この監督の映画を一度真剣に観てしまうと、たいていの映画の撮影が非常に「稚拙な文法」に思えてきてしまう。そもそも、映像とは無限の静…

さよなら歌舞伎町 (2014) - 染谷将太という説話を観る。

廣木隆一監督。 確かに歌舞伎町には韓国から来て仕事をしている人が多いという着眼点は良いが、映画世界の中でいきなり韓国語でのシークエンスを続けてきて驚く。複数の独立したストーリーが、ひとつのストーリーとして収斂するような作品ではない。それぞれ…

娚の一生 (2015) - セックスシーンのない、普通の邦画を観る。

廣木隆一監督。 画面を観るかぎり、独創的で目を覚まさせるようなscreen playがなかったことは残念であった。 もしアメリカ映画であればセックスシーンがあるべきような、典型的なラブストーリーである。本作はそのようなシーンがない。

呪怨 終わりの始まり(2014) - 存在=非存在が日本で当たり前であることを観る。

落合正幸監督。 『ブンミおじさんの森』で、アジアにおいて存在=非存在の人間が登場することが、文化的に受け入れられていることを先述した。東南アジアにおいてそうであるように、日本においても存在=非存在が当たり前のように受け入れられる。その証拠が…

The woman in black (2012) - Men in blackとは大きな違い。

James Watkins監督。 Daniel Radcliffeがハリーポッターシリーズを勤め上げた後の、初めの主演作。たいした作品ではなかったのに、興行収入は良かった。 問題なのは、Daniel Radcliffeの演技の下手さ。もうすこし、なんとかならないものか。その後『Horns』…

Wrath of the Titans (2012) - CGが圧巻。

Jonathan Liebesman監督。 登場人物たちにあまり共感ができなかったが、CGが圧巻である。やはり映画は空想の世界を描くことに、技術的な得手がある。ヒューマニズムを描くことに対して得手があるかどうかはわからない。本作は、空想の神が、すこし小汚いおじ…

The Apparition(2012) - カビが生えてくるというホラー。

Todd Lincolin監督。 自宅の部屋にカビが生えてくるという、奇怪現象が起こるという売りのホラーである。 カメラワークについて、映画におけるカメラは世界を写すのではなく、むしろ映画世界を制限するために存在している。実は、カメラの役割は映画における…

Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives (2010) - 音楽が無いことが光る。

Apichatpong Weerasethakul監督。 通常の映画であれば、なにかと映画音楽をつけたがるものであるが、本作にはほとんど音楽がない。かろうじて形而下音楽である宮廷音楽のようなものと、ラストシークエンスのロック音楽が流れるぐらいである。音楽の使い方が…

Horns (2013) - ダニエルラドクリフは、おそらく演技が下手である。

Alexandre Aja監督。 映画の現代潮流について、「ハリーポッター以後」と分けることができるのであれば、かのEmmanuel Toddの有名著書のような魅惑の響きが得られるように考えるのであるが。世界を風靡したハリーポッターのシリーズが、現代映画においてのポ…

The Perfect Host (2010) - Pierceの演技がなかなかである。

Nick Tomnay監督。 David Hyde Pierce主演。なかなかの映画である。これで後半に採用された、在り来たりのラストストーリーが無ければ、よい映画になっていた。ポイントは、主人公が食事会を再び開催するという、繰り返しの型を作成したかったということであ…

Ragin Cajun Redneck Gators (2013) - アリゲーターが村を襲う。

Louis Myman監督。 なかなか、低予算であるとCGの質が目に見えて下がるものである。本作は、どことなく毒をもっているような、毒イモリとアリゲーターがキメラになったような生物が出てくる。彼らが飛び道具を持っているとは、反則的である。

太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男 (2011) - チェロのソロパートという映画音楽。

平山秀幸監督。 標題にある通り、米軍にフォックスと呼ばれた男が主人公である。 B級映画の定義である、戦闘中における不自然な言語応酬が確認される。カメラワークにおいても、人間がこんなかたちで配列しているものか、井上真央が説得不能な意固地すぎる人…

Maximum conviction (2012) - 銃撃戦

Keoni Waxman監督。 アクション映画に普遍的なことであるが、基本的な戦術は銃撃と打撃の二つのみである。すなわち、打撃ができなければ銃撃をして、銃撃ができなければ打撃をすることになる。これは何を意味するかというと、アクション映画における代名詞で…

The Next Generation (2014) - カップ麺が飛ぶ様子を見るだけでも、お買い得。

押井守監督。 全ての現代邦画が、というわけではないが、主人公たちの居る部屋がきたない。ただでさえ日本の間取りは狭いというのに。良く言えば狭い部屋がさらに狭い空間のように感じられる。しかし、本作においては、部屋が小さいというのに、遠近感覚が不…

TOKYO TRIBE (2014) - 日本にめずらしい、アクションB級映画。

園子温監督。 監督は、ただ女の子の格闘シーンをとって、合間に白のパンツが見えるシーンが撮りたかっただけなんじゃないか。そう思った作品である。 本作を観たのは目黒シネマであるが、そこでは雷音上映といって、通常よりも体感で1.5倍ほどの音量で上映す…

ヒズミ (2012) - 日本版『気狂いピエロ』。音楽がその場を支配する。

園子温監督。 震災という状況設定と、ボート店の湖畔に沈みかけている家という象徴(もしくは記号とも呼べる)が、いまいち作品のストーリーにどう関わっているのかが不明である。なぜなら、染谷将太も二階堂ふみも、親からの理不尽な暴力というものを溜め込ん…

L'Extravagant Voyage du jeune et prodigieux T. S. Spivet (2013) - 永久機関ではなく、親子の話である。

Jean-Pierre Jeunet監督 永久機関を作る子供の話かと思いきや、親子の疎遠と回復を描いた映画である。いったい永久機関とはなんだったのであるか。いいかえれば、Kyle Catlettの発明するものは永久機関でなくても一向に差し支えない。重要なのは、なにかの受…

About Time (2013) - 自慰的なストーリー。

Richard Curtis監督。 Rachel McAdamsの演ずる女のボーイフレンドは、『ミッドナイト・イン・パリ』のように本人に内緒で勝手にタイムトラベルをする。本人は、彼がタイムトラベルをしていることを信じていないか、もしくは本作のように知らされていない。 …

The Grand Budapest Hotel (2014) - 映画館では笑いをさらっていた。

Wes Anderson監督。 映画という描写方法には、映画館でなければわからない点が複数ある。一つには映画館ならではの音響、二つには座席によって異なる画面の見え方の相違。そして三つには、観客に作品が受け入れられているかどうか、である。この三点目は、実…

Haywire (2012) - 女スパイ&アクションの頂点。

Steven Soderbergh監督。 邦題で『エージェント・マロリー』と題されているように、女スパイ映画の王道を行く映画である。 本作はキャストが極めて成功した。アクション映画では主役に格闘家出身者を起用することがあるが、本作の主役には女の格闘家が起用さ…

The Hangover part 3 (2011) - 量産をしている。

Todd Phillips監督。 日本版のキャッチコピーは「もう、しません。」と言うらしいのだが、実は嘘である。主人公が三人組であるから、一人ずつ結婚させれば三作品が量産できるにも関わらず、何故が通常のロードムービーとなった。そのため、誰も泥酔していな…

The Hangover part 2 (2011) - 量産をしている。

Todd Phillips監督。 主人公が三人組であるから、一人ずつ結婚させれば三作品が量産できる。本作は前作で結婚した人とは別の人が結婚する予定になるというわけだ。 Jamie Chungなど、韓国系アメリカ人2世が、わりとアメリカ映画に多く出演するようになった。…

La D?licatesse (2011) - おそらく幻想の話である。

Stéphane Foenkinos監督。 Audrey Tautouののんきな演技は相変わらず。François Damiensも下手。この男優は基本的に私は嫌い。 職場の恋人が会社に在籍していたり、在籍していなかったり、人物の空間占有感覚が不明な映画である。認知機能が基本的に不明であ…

滝を見にいく(2014) - 超駄作なように見えて、やっぱり駄作。

沖田修一監督。 せっかく『横道世之介』で評価していたのに、何だかよく分からない作品を撮ってきた。 元々より、人間同士の価値観が折り合わず、なんらかの理解しあえない溝のようなものがあるというのが、本監督の醸していたコメディの原動力となっていた…

Danse Macabre (2014) -ストーリーを錯覚させる音楽。

Pedro Pires監督。 女が首つり自殺をする。遺体は検死される。遺体に水がかけられ洗われる。心臓が運ばれる。死体は泣いている。棺にいれられる。そして焼却される。 硝子の割れる音がする。黒いカラスが舞い降りる。鳩が飛び立つ。椅子が寄せられる。ここま…

たとえば明日も朝が来て (2014) - 役者のルックスはストーリー展開とは独立している。

高良嶺監督。 アマチュアの作品である。 早稲田大学映画研究会の作品なので、まさかこの学生が将来この名前で監督をしているとも考えにくいのであるが。吐血するシーンは、『Stealing Beauty』であれば、一度カットして、口に実際に液体を含ませて吐かせるシ…

The Social Nerwork (2010) - 懐古形式は、各登場人物のストーリー展開を時間内に展開しやすい。

David Fincher監督。 パノラマが夜景となるショットを導入していた。また、ボート競争をするシークエンスにて、音楽の使い方が新しかった。途中から音楽をゆるやかに転調させるのである。これは観客もしくは競技者の形而上音楽であるが、切れ目の無い転調を…

21 and Over (2013) - スローモーションと映画音楽の応用。

Jon Lucas, Scott Moore監督。 アメリカは鷲とバドワイザーの国である。主人公である三人の21歳男の中で、泥酔する人間はJustin Chonである。彼が韓国系米国人である。泥酔する登場人物がアジア系であることが、作品の完成度を上げた。なぜそれが面白いのだ…

Populaire (2012) - タイプライターの早撃ち世界大会。

Régis Roinsard監督。 『幸せパズル』ではジグソーパズルの世界大会があって、本作にはタイプライターの早打ちコンテストがある。人間はどんな装置にしても、その早さを競争することが好きである。この事実を知っていたら、新しい映画のシナリオ五十本でも書…