かの横光利一が小説「機械」の描写法として応用したほどの、クローズショットの技法を多用した作品。フランス白黒映画の名作である。
少し長めの状況設定から入る。ジャンヌ・ダルクの異端審問についての書物があるという説明がなされ、以後その書物の中に記載されていると思われる会話内容が、映画で表現される。
特筆すべきは制作者の空間設定の綿密さで、いかにジャンヌや審問官の顔のみがクローズアップされるといえども、目線や顔の角度から、画面に自然な奥行きを感じることができる。この奥行きは、直接画面の中に表現されているのではなく、画面の外にあるであろう実際の空間の暗示をすることで表現可能になっている。クローズショットを連結させるだけで奥行きを感じられたということは、本来的に高度な技術である。
当時は、医者が患者にすることといえば血を抜くことぐらいであった。「悪い血」を抜けばよいという発想で、実際の生理科学としては間違っている。瀉血が観れる貴重な映画でもある。