a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

? bout de souffle (1959) - 魂がぬける、タバコ煙のひとかたまりが逸品的である。

Jean-Luc Godard監督

男が女とともに警察から逃避行する。しかし、途中から女が裏切る事になり、男は悲惨な結末をむかえるというストーリー。重要なのは、これがサクセスストーリーではなく、ある男がほとんど無意味的にただ死ぬというストーリーである点である。そのため無意味に警官を殺し、無意味に他の警官に追われ、道で知り合った女と行きずりで抱こうとした挙げ句、無意味に死ぬ。ゆえに、ストーリーだけを語ったとしても、あまり面白い映画であるようには見えない。その点では、後作である『気狂いピエロ』と基本的におなじストーリーの土台をもつ。

だから、本作がなぜ星の数ある映画の中で常に人気作に入るかといえば、それは映画の描写の仕方や、映画の作り方としての時代を超えるほどの美しさにある。

そのため、とりあえずおすすめできる作品である。

私が圧倒的に好きな部分は、最後のシークエンスである。

最後、タバコなんて加えていなかったはずなのに、倒れたラズロはタバコの煙をひとかたまり吐いて息絶える。なんてすばらしい配慮のある映画なのだろう。現実的な描写の慣習を軽く超越している。 魂が抜けて行くようすがきれいに描写されているこのシーンをみると、シネマの快楽を感じずにはいられない。

このワンショットを観るためだけに、90分ほどある本作を観る価値があると真剣に考えている。 すなわち、主人公の男には悪いが、無意味に事件にまきこまれ、無意味に死んでしまってほしい。ただし、死ぬ間際に、ご丁寧にタバコを加えてくれるような配慮だけは忘れずに。