a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

The Grand Budapest Hotel (2014) - 映画館では笑いをさらっていた。

Wes Anderson監督。

映画という描写方法には、映画館でなければわからない点が複数ある。一つには映画館ならではの音響、二つには座席によって異なる画面の見え方の相違。そして三つには、観客に作品が受け入れられているかどうか、である。この三点目は、実はどこのネットのレビューにも載っている情報ではなく、完全に映画館に赴かなければ得られない情報である。

そこで、映画館へ映画鑑賞に行くという、シネマの快楽というものは、個人的な観点で留まらせるべきではなく、より集団的な観点へと広げることもできる。淀川長治が言う事には、かつて映画館では主人公に対して「いいぞ!」と叫んだりと、集団の中であっても自由に鑑賞していた。いまとなっては、公共の映画館では見かけることができないが。

W.Dafoeが雪道を滑走して逃げるシークエンスが、かなり笑いをさそっていた。このシークエンスは遊戯の定義に基づいているが、私がおもしろかったのはその画面である。CGを使用しているのだが、あまりにも早い速度で滑走するので、画面を下から上へと一秒未満で移動する点のようである。この描写もまた、人物を正確に画面にとらえる、という映画の仕事からの逸脱であり、また遊戯でもあるのだ。