George Seaton監督。
Jean Seberg、Helen Hayesなど有名な役者揃い。Jacqueline Bissetは本作後あたりからがより有名になっただろうか。本作のような構成をensemble castと英語で呼んでいるそうだ。明らかにフランス語源でまざっていて、気持ちのわるい単語である。フランス語ではDistribution d’ensembleという。日本では過去作品の名称をとってグランドホテル形式。つまり、ひとつの場所にストーリーを持つ人物を複数集めて、ひとつの事件で全員のストーリーを変化させる。世界は数多くの人間のあつまりによって出来ている、という事実を反映させた形式である。『駅馬車』やそれにインスピレーションを得た『網走番外地 北海篇』も、その括りに入る。
問題なのは、より現実的感覚に近いDistribution d’ensembleが、はたして映画の中においてドラマチックな説話構成力に乏しい。私はこれらの作品よりは『カサブランカ』や『Blue Valentine』の方がドラマチックだと感じている。
SebergおBurt Lancasterが、Hayesの無賃乗車を責める場面など、映画史に残るなかなかのシークエンスであるように思う。Hayesが去り、Sebergがくだをまいている途中、Lancasterが女の肩を抱いたところで、ストーリーが変化したように思う。ストーリーが複数平行しているのがDistribution d’ensembleの特徴であるが、1ショットの中でストーリーが切り替わる瞬間は、ここで観察することができる。