a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Broken Blossoms (1919) - 不当待遇による悲劇の元祖を観る。

David Wark Griffith監督。

silent pictureの良いところ、すなわち現代映画には決定的に抜け落ちてしまっている要素として、登場人物の感情描写が豊かである。その豊穣さが非常によくわかるのが本作であるが、典型的なのはLillian Gishの主に表情を活用した演技にあるだろう。おそれ慄くという単語がよく似合うような顔の演技。おそらく、現実世界においてはあのような(傍点)おそれ慄き方はしないはずで、感情を伝えるために特化した、やや誇張を含む演技であると思われる。ベットで死ぬ際に、あからさまに目を剥いて「死にました」と主張するかのような演技である。現代映画にはこの演技方法はすでに抜け落ちているが、映画の説話、ストーリーの展開の表現について、それらを役者、スクリーンプレイ、音楽のどの要素に依存して表現するかというポイントが変わったわけである。

彼女が映画世界において苦しんでいることは、彼女の演技で十二分にわかるわけで、悲劇として立派に成立するためには、演技者の技量にその多くを依存している。

不当な待遇を受けている人間を見ると、第三者はその様子を見て同情心がおこるのが普通である。