a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

The Turin Horse (2011) - 環境を巻き込んで撮るという芸当。

Tarr Bela監督。

移動する被写体を、シームレスな映像として延々と撮影する。それがTarr Belaの映画の「文法」である。この監督の映画を一度真剣に観てしまうと、たいていの映画の撮影が非常に「稚拙な文法」に思えてきてしまう。そもそも、映像とは無限の静止画が連続した上に発生する描写法で、そのようなものとして1895年に発明された。そしてこれからも、その本質は変わることができないであろう。その中で、いかにシームレスな映像を作成するかに真剣に答えを出したのが、Tarr Belaであると、私は思う。

ニーチェの馬という、私も知らないような題材を派生させた作品で、作品自体が豊かな教養にあふれているといえる。

じゃがいもを食べる父が、どことなく滑稽なように思える。

ある被写体を10秒でも20秒でも撮り続けるという手法は、A.Trkovskyの意図した技と多少通じるところがあるかもしれない。しかし、ある一つの画面の中で、近景と遠景をひとつの情景として還元する手法は、Belaならではの技術である。それは、近景と遠景の淫らな融合でもあって、また主人公そのものを環境と巻きこんで撮るという芸当である。