a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Nymphomaniac (2013) - モザイクのようなバラバラの編集と、役者の技術の粋を観る。

Lars von Trier監督。

この監督は、本当にさまざまな映像技法を知っているのだけれど、その技術はいずれも完璧な水準とまではいかない。例えば音楽にしては、冒頭でKubrickの『アイズ・ワイド・シャット』と同じ曲も使ったが、その作品のように映像にマッチした音楽にはならなかった。Kubrickなら、まさか自分の映像にBachやハードロックを取り入れることはない(事実、彼の作品にはそれらの音楽は使用されていない)。音楽の使い方はKubrickには遥かに及ばず、Lars von Trierは特に下手である。

また、編集に関しても、余計な文字を挿入したりと、物語を逆に複雑にするようにと忙しい。一方で、役者の顔をdetail shotで写すのが大好きである。

しかし、この監督の作品は、彼が上記のように複雑で不思議な編集をするが故に、役者の表現技量が重要な土台になっている。その中で、Charlotte Gainsbourgは特に大きな役を負っている。

監督は『アンチクライスト』に特に思い入れがあるようで、同じモチーフを何回か使用している。今回も、私はそこまで詳しくはないのであるが、キリスト教の原罪を現代にもわかりやすいように提示する目論見があったであろうと推測された。そのためなのか、彼の監督作品の主人公は『アンチクライスト』は夫婦であるが、他はそろって女である。

ストーリーとして特筆できる点は、最後のクライマックスの作り方である。volume 1,2 と4時間以上にわたって繰り広げたストーリーが、たった一夜の出来事であったことを、ふいに思い出させてくれる。また、その夜の結末が、ストーリーを全て観た人間からは多少なりとも主人公にとっては「ポジティブ」な結末に見えるという、不思議な効果があった。なぜなら、彼女は本能的に自らの業から更正できていたので。秀逸な終わらせ方であった。