a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Bram Stoker's Dracula (1992) - すばらしい映像美を観る。

Francis Ford Coppola監督。

Wojciech Kilar音楽制作。

どうでも良い雑談であるが、映画の画面とは、奥行きを表現する態度であると私は考えている。そのため、登場人物は奥から手前へと移動してきて、結果としてカメラがその動きと連動して動くことで、いままで手前であった座標が奥に変わる。そして、その逆もワンショットの中で在り得る。いわば奥=手前という感覚の曖昧な世界へと、そのダイナミックな表現が生まれていくと思っている。それは、日常生活では感知できないものである。人間の視界では、手前にあるものはどうあがいても手前であり、奥にあるものが急激に手前へと現れることもない。

しからば、蓮見重彦がいう「映画の快楽」は、その一部が画面そのものにあるというのも頷ける。本来であれば、映画館で観ることによって、その非日常感覚は増幅する。ドルビーサウンドなどという表現にとっては過剰でしかない設備など無視して(もっとも音であるから無視することはできないが、、、)、画面のみに注目しつづければ良い。

そして、本作はその奥行きを十分に意識して撮影されている。その上で特筆できることは、画面同士を重ねるディゾルブの圧倒的な多用である。それはいわば波のように押し寄せてくるほどの使い方で、多少観ている側を混乱させてくる。しかし、本作のような趣旨の映画であれば、逆に作品によって混乱させられたいような願望を感じる。それは、Mina Harkerが血を吸われたいと衝動に駆られて、自ら血を差し出すような突飛な行動と似ている。当然のことながら、そのように感じることができるのは映画の作りの質が高いことが前提である。

また、音を無視すべきと述べたのに、本作の音楽は非常に良いのでむしろ聴いた方が良い。作曲者はWojciech Kilarである。