William Friedkin監督。
映画の快楽とはまさにこの映画の提供する時間のごときものである。主人公が捜
査官であるとか、アメリカにフランスのマフィアが攻めてきているという主題と
は快楽は関係しない。捜査官とマフィアの物理的な距離感を、きわめて忠実にフ
ィルムにしている点が、快楽と大きく関係している。観客があたかも自分が捜査
官になって、実際に世界を見ているかのような感覚を残してくれるのである。物
事やストーリーを、客観で描写するだけではなく、主観で描写する姿勢を崩して
いないからである。こういう姿勢の映画は、実は近年は特に減ってしまった。