a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Drifting Clouds (1996) - 本来的な人間劇を観る。

Aki Kaurismaki監督。

順風満帆そうな夫婦が居る。ふと、夫がリストラに合ってしまう。そして夫が再就職に苦労しはじめていると、妻もリストラに合ってしまう。そして何をしても上手くいかないうちに、税金逃れをしているなどと因縁をつけられて警察の影も忍び寄り、ストーリーはとても不穏である。しかし、ある拍子に店を任せられる偶然によって、妻は無事人気店に就職ができる。そして店の外に出て空に漂う雲を眺めるのである。

叙事的かつ叙情的なストーリーである本作は、なかなかに鋭い人間観察の賜物のようにも見え、また緻密な性格を持つ人間が組み立てるストーリーでもある。人間描写のために、ストーリーをここまで緻密に作る姿勢の監督はなかなか居ない。自由奔放な監督が多く、それか緻密に作った末に疲弊する監督も居る中で、本作は終わりまで疲弊せずに瑞々しいままでいるように見える。その点がまた凄いところ。