Michael Moore as director
10分間の上映の後にオープンクレジットが示される。その後に来るのは、漆黒の画面に9/11の事故音源のみが流れるシークエンスである。この使い方は非常にうまい。
本作では、ブッシュ政権側の人間の感情発露を一切作品に乗せていない。であるから、ブッシュ政権側を敵としてのキャラクターにすることができた。一般論として、感情発露をする人間には同情心が引かれやすい。泣き叫んでいる人間には特にそうである。そのため、主人公もしくは同盟的地位にあるキャラクターにはそのようなショットを追加し、敵にはそのようなショットを一切追加しない。もし、万が一にでも、本作にブッシュが泣いているショットをひとつでも入れれば、一気に駄作となるだろう。それも、批判すらも政権にではなく、苦悩している一個人を映画という恣意的な媒体で苛めようとしているMichael Mooreへと向くだろう。『ブッシュも苦しんでいるんだから、許してやれよ』と観客がブッシュにも同情してしまう可能性があるからである。