a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Mademorselle (1966) - リアルな被写体を観る。

Tony Richardson as director

cinema scopeの使い方や、切り返しショットの効果を理解されずに撮影されている。映画として残念なことである。移動撮影も無く、全体を通して単調である。

一方で、リアリズムに根ざしている点だけが、映像を詩的なものへと変容させ、また見事なものへとさせている。手に絡みつく蛇、なぜか虐待されてしまったウサギ、燃える家、倒壊する樹木。すべてリアルである。そして、映画音楽を一切用いない姿勢により、そのリアルは説得力を持ちうる状態に維持された。この点がすばらしい。

この映画が製作された時期に、大西洋を隔てたアメリカ合衆国においてはHitchcockがスタジオ撮影に凝っていて、彼の映画の風景の多くはドローイング(絵)であった。つまり森での逃避行のシーンは実際にはスタジオで行っており、辺りの森林は風景画を重ね合わせるなどして対応していた。フランスとアメリカは近いようで遠い国であるのは、映画撮影方法の好みの差にも現れる。