今村昌平監督。
日本の共同体意識と、山の自然との調和が描かれていて映画として上手い。非常に美しかった。
姥捨て後の積雪のシーンが若干画面が汚い。悪天候の野外をおして撮影をしているから、室内で撮影をするよりは画面が粗いに決まっている。本作で描きたかったのは、日本におけるムラの意識の象徴としてあった姥捨てだ。その感動的な事後を、粗い画面でつなげては感動が薄い。興ざめというものである。もちろん、姥捨てという事象そのものに観客の感動が必要なのか、と問われればそうではないだろう。ただし映画を映像芸術作品と捉えたら、「日本には姥捨てがある」という説話だけで映画が終わるわけにはいかないだろう。観客に感傷をもたらすドラマチックな展開こそ必要だろうと、私は総合芸術としての映画に与するが、本作にはそれが無かったように思う。言い換えればエンターテイメントを、根っ子の部分で信じていないのではないかと思われる部分がある。