a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

うなぎ (1997) - UFOを待ってしまう圧倒的な作品的敗北を観る。

今村昌平監督。

 孤独を排し現実を受け入れ、新しい家族と再生すべきだというストーリー。

 残念ながら、私は大嫌いである。

 物語ラストで刑務所に入る主人公が帰ってくるかどうかを、愛人が気にする場面がある。女は彼のことが好きだったのに、どうして彼をUFOに例えてしまったのかが謎である。物語を目で追った人にはわかるだろうが、UFOとはうなぎと同格に語られていて、人間との交流を拒否し、空想の事物に依存する弱い人間たちのメタファーになっていた。前半部にUFOを待つ青年を否定するシーンがあるからだ。引きこもりを止め、現実を受け止めて家族を再結成する心理的変化を賞賛する作品において、そのために主人公は飼っていたうなぎを作品後半になって川に返したはずだったが。彼はすでに現実を受け入れてうなぎやUFOを排する勇気を持っているのに、女がUFOの方を待つようになってしまっては、作品全体の心理的成長を逆行させる解釈を生みかねない。

 「UFOは来ないけど、彼はきっと来るのよ」とでも言った方が、抽象的にもスムーズな作品であったと私は信ずる。UFOの宇宙的なレベルでの抽象性に錯乱してしまったのか、不明なストーリーである。