Robert Altman 監督
これは朝鮮戦争の戦線近くの米軍の野戦病院の話である。しかし、冒頭のテロップと多少のシークエンスを除けば、まったく朝鮮戦争には見えない。むしろこれはベトナム戦争のように見える。
監督はこの点に対して、米国人に忘れられかけている朝鮮戦争ではなく、ベトナム戦争のイメージで作ったと言った。だから本作は、アメリカの戦争コンプレックスに直感的に接続するように作られている。それならば、わざわざ朝鮮戦争にする必要がない。でも、原作と脚本が朝鮮戦争だから、一応合わせたのだろう。この作品は、監督がアドリブ推奨派だったので、ほとんどの台詞は脚本と異なるが、皮肉なことにアカデミー脚本賞を取った。アカデミー賞が信用ならない賞であることがわかる。
米国戦争に反動的なこの映画は、コメディではあるが、一方では最前線手前の病院とあっていつ死ぬかわからないという恐怖、この二つが混在している。むしろ、その恐怖から自分自身を守るために、わざと陽気に、インモラルに振舞わなければならない人情というテーマが見て取れるようにも出来ている。
病院に来た外科医たちは、女性将校に小学生さながらのいたずらを繰り返し、日本では舞妓と豪遊、そこで上司にみだらなスナップ写真を撮って脅す。監督は編集してみて驚いたそうだ、これらのコメディの作品的な関連性の無さに。うーん困った。FOXの上司にも怒られるという中で、彼はスピーカーのショットをすべて後付けしたという。つまり、スピーカーを野戦病院の象徴にして、さらには作品自体の象徴にしたのである。そうすれば野戦病院の中での群像的コメディとして、シークエンス同士がうまくまとまる。とても良い手である。