蜷川実花監督。
全身整形をした沢尻エリカの部屋は、赤を基調にした芸術的ともエキゾチックともいえる空間である。背景には不自然に大きすぎるリップの写真、居間を抜けると彼女の写真が壁にずらっとかかっている。全てが彼女の過去・現在・未来、そして人間性を象徴している。よく作って撮ったものだ。やはり色味だ、写真家出身の監督の独特な強みは。
音楽も日本人にして特殊である。サウンドのベースは何だろう、ショスタコーヴィッチだろう。渋谷の町にショスタコーヴィッチを流しているのである。とんでもない使い方だ。観客はこんなセンスわからないだろう。かといって、第九とカノンの使い方はどうか、これは観客にも馴染みがあるだろうが、新しさと面白みに欠ける。ラストのシュトラウス、最悪。これを高尚だと勘違いするのであれば、その人はまだまだ教養が貧しい。
映画全体としては、最悪な作りをしているようにみえる。シークエンスとシークエンスの繋ぎ方に、心惹かれないのが事実である。沢尻エリカは完璧だが、依存し、酷使させすぎた。映画全体が生き生きしていないし、映画全体として新しいことはない。もっとディテール・ショットで表現すれば良いのに。映画が本当に好きで何百本も毎年勉強しているような監督ではない。部分的に優れたシークエンスがあるだけだ。