Dario Argento 監督 とりあえず寝ていれば良いのに寝ない。おとなしくしていれば良いのに学校の秘密を暴こうとして殺されてしまう。その様子の恐ろしいこと、本作を超えるものはない。 誇張されたライティングが興味をひく作品であり、赤を原点としながらも青や緑、黄金色へと変化させる塩梅については見事と言う他ない。映画を映像作品としてとらえるならば重要なのは画像の変化であって、一枚の画としての美しさよりもその変幻自在性の方が大切。絵画ではなく、映画なのである。色の変遷が作中に提示しているものは、人間を超越したなにかである。その抽象的な映画メッセージを恐怖ととらえても、もしくは魔女やオカルトの非論理的世界ととらえても、もはや問題ない。その日常を超越した何かを感じることさえできれば、本作を観る価値が十分にある。 この『サスペリア』は『サスペリア part2』という作品も存在するが、その作品よりも後に公開されている。これは日本では公開年次とは逆の順番で輸入されたために邦題的には順番が入れ替わってしまった。なんとも残念な邦題である。
終盤、主人公の勝ち誇った顔の表情が印象的である。当然、これは誇張された感情である。恐怖から逃げ切った安堵という当然の感情に落とし込まなかった点にも、Dario Argentoの慧眼がある。 (黄金の色使い。)