a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

青春残酷物語(1960) - りんご

大島渚監督

 提示されているテーマがあまりにも明瞭で、結末のシークエンスが予想できてしまうのが玉に瑕だ。それはタイトルがあまりに強力すぎることも加担しているのだが、かといって代替案になる名称も思いつかない。それほどに青春の残酷さをテーマとした映画なのである。

 青春の只中にいる若者の残酷性を描いた映画というのではなく、むしろ青春そのものが残酷であることをテーマにしている。川津祐介が荒くれだから初めは若者の残酷性を描くのかとテーマを勘違いしてしまうのだが、よくよく観ていくとまったく彼もその青春の残酷性の被害者になるのである。むしろ、加害者にみえて一番の被害者であると思えなくもない。いや、やはり一番は女の桑野みゆきの方か。兎に角、男にも女にも残酷な映画。

 途中、女を堕胎させてなお悶々を考え事をして、りんごを食うシーンがある。ここでりんごを差し出すあたり、大島渚は粋である。

(りんごを食らうシーン)