Joann Sfar 監督
ついにこんな映画を待っていた。2010年代に乗ってもなおCGに頼らない映画である。監督は漫画家としても活躍しているそうであり、アニメーションが登場するが、それらと現実との融合の様が見事である。
映画の面白さや芸術性が単にCGという技術のみに依存することがない様に、映画の奥深さは演出に関する独創性から芽生えることがある。その点に於いてフランスの反逆精神、もしくは世界を見回して新興国の映画の勢いは目を見張るものがある。ここで残念なことに脱落するのはハリウッドの映画演出における新規性で、もはやスクリプトやカメラワークに独創性などあったものではなく、CG技術の向上を競うだけのフィールドになってしまっている。
そこで、無理にCGから脱却せよというのではないが、CGを使わずに愛を表現することはできないか。人間の二面性を表現することはできないか。本作は一種の古典主義のような回帰を見せつつも、限りなく新しい演出を立てつづけに見せてくれる。様々な映画監督を見てきたが、Joann Sfarのこれからの成長度合いは、計り知ることができないでいる。
Lucy Gordonの演技をもう少し観たかったのだが、本作の後に自殺したそうで、それだけ残念である。