a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Hugo (2011) - 満願

Martin Scorsese 監督

 かのモヒカン・デニーロを『タクシードライバー』で生み出した過激な天才監督が、ここまで爽やかな視聴後感覚の映画を作るとは! しかも、ジョルジュ・メリエスを実際的な主人公にして自らの作風に順応させてしまうあたり、本作はまさに監督が自由に一番撮りたい作品を2010年代になってようやく撮ったと言える。映画に狂喜し憧れる少年・青年を撮るのは、少年期の自分がそうであったように、監督にとっては最も身近であり感情移入のしやすいテーマである。そんな監督に愛された映画はいくつもある。かつてのスピルバーグの『super8』、ベルトルッチの『ドリーマーズ』、etc.

 本作のストーリーはあまりにも陳腐であるから、メリエスが主人公であるという設定が楽しいわけである。特に『月世界旅行』を知っている人からすれば、メリエスはSF映画の教祖だから痒いところをかいてくれるような嬉しい作品である。裏を返せば、メリエスを知らない観客は、陳腐なストーリーだけで観進めることにもなりかねず、本作の面白さを果たして感受できるのかどうか。