a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Metropolis (1927) - エキストラの偉大さ

Frizt Lang監督

 本作を超えるSF映画はあまり多くない。また、SFの中でここまで群衆に着目した映画もそう多くはない筈である。労働者階級の群衆、子供の群衆、暴徒化した群衆、祭り気分の群衆、etc。それぞれの群衆には歴然とした個性があり、そのために動員されたFrizt Langの聡明な映画的感性と膨大なエキストラ人員が、本作のSFとしての超絶さを不動のものにしている。

 本作でエキストラ以外にどうしても目が行くのはアンドロイド・マリア、すなわちBrigitte Helmの演技である。これもまた素晴らしい。

 本作のエキストラ動員数は映画産業としては異常に高いのであるが、世界観を適切に描くという観点でいえばむしろ適正値である。描かれた世界に適切な人口が配置されている。思えば、近年のSF映画の多くは圧倒的なCG技術であるが、エキストラの動員数がそのCGが描いた壮大な世界観にしては少ないという虚無的矛盾があるかもしれない。あの『スターウォーズ』シリーズのデス・スターに、あれだけ大きな建造物の割には画面に登場した兵士の数が少ない、すなわちエキストラの数が足りないのではないかと私は不満に思ったものである。つまり、想像上の大伽藍を建てることが可能になった今、その中にいる住人が案外少ないことに気づく。本作の良さは、エキストラがいかに映画世界を構成する上で重要かを適切に見抜いた点にあるだろう。