a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

BeRLiN (1995) - 美しさがわかるということ。

利重剛監督

 

 サラリーマン役のダンカンが、「ただいま電波の届かないところに居るんだよ」とドスの効いた発言と共に業務をサボる、名言が生まれた作品。私もいつかこの名言で仕事をサボタージュしたいものだ。

 中谷美紀について全員が惚れ込んでいるのだが、結局、彼女の魅力とは何だったのか。おそらく、彼女には美しさがわかるということで全員が魅力を感じたのだと、私は思う。他の人間は皆、世間体を気にしているのに対して、彼女は世間体を気にしないで「私が」とか「私は」という主語を必ずつけて発言するほどの自分中心思考なのであった。それが、ゴミでオブジェを作る、私から見ても世間から見ても到底「いい男」ではない永瀬正敏に対して「美しい」を発見できた源泉なのである。しかし、そんな彼女も「風俗嬢を辞めれば?」という彼氏の言葉によって世間体の価値観の額縁に入れられかけ、泣け叫びながらこれを拒否。一旦の破局を迎えるのであった。

 今回の「ベルリンの壁」というのは、言って見れば美しさのわかる人とわからない人との壁。もしくは世間体に奉仕する主義と、個人の価値観に従順に生きる主義との隔絶さと反発を描いたのであり、また、後者への憧れと越境を表現したのであると私はみた。