Pierre Huyghe監督
10分に満たないこの作品の中には、裸婦の彫刻とそれに群がる蜂の大群によって対比されている。あるいは、澄んだ水の中で水を掻き分けるのすら重労働であるかのように必死にうごめく水生昆虫や、犬の四肢に群がってその肉を食おうとするアリとその彫刻が現れる。それは自然の営みから、人間だけが隔絶され、置いてけぼりをくらう様に出来ている。
思えば映画とは、人間のストーリーで展開される。一方今回の作品はフォンダシオン ルイ・ヴィトンのエキシビションで流されたことのあるアートである。この中には、人間のストーリーはなく、人間だけが自然の営みの時間を忘れ永遠なる概念に固着してしまった様を、昆虫の営みによって表現している。表裏一体、という言葉が最適である。映画が表であれば、本作は裏であり、逆もまた然り。