a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

O CONQUISTADOR CONQUISTADO (2012) - 観光客

Manoel de Oliveira 監督

 

 『ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区』に収録されている。

 独創性と風刺を堪能できる作品である。根底には歴史というテーマがあり、主題として彫像と観光客が登場するわけである。よく考えてみれば、観光客という属性の人間はよほど世の中の一部が裕福で安全にならなければ誕生しなかった。フィルムの中に、20世紀の大戦前後には登場していなければ、60年台や70年台にも見かけることはない。観光バスで乗り込んできて、大挙してカメラを撮りまくり住民たちの肖像権を侵攻してくる彼ら(言い過ぎか)は、やはり2000年台になってようやく映画に登場するようになった。それも世界が安全になりつつある故である。彼らがどのようなエキストラ属性を持つのか、もしくは登場人物級の役割としてストーリーに入れるのか、それとも背景以外の何物でもない生活様式の一部であるのか、その映画におけるポジションは未知である。本作はそれを果敢に開拓した。

 これから、まだまだ観光客は映画製作のまな板の上で、独創的に解体されていくことだろう。本作はその先駆けである。