Terrence Malick監督
恐竜が出てきたり、太陽系や惑星のCGが登場したりと、まるでDIscovery channelのような趣旨でもあり、従来の映画のストーリーの枠組みに収まらないシークエンスが続くのであるが、視聴した際はその点が好みではなかった。後半のシークエンスでは強権的な父性と、人間性が極めて不安定な少年の心の葛藤(あるいはゆるやかな成長)を描き、見事である。それを観て、手前勝手ではあるが『ファニーとアレクサンデル』に出る教父を思い出した。教育のためには暴力も厭わないが、そんな父親を演じることに密かに葛藤を感じている、あの父親像である。
もし、異時間軸の事象を並列する構造で製作するならば、恣意的で押し付けがましい映画にもなりがちなのであるが、本作にはそれが感じられなかった。例えば、複雑な構成にしてパルム・ドールを狙ってやろう、というものではない。作者の中から自然に湧きあがってきたものが、必然的に異時間軸が連結したものとして掘り起こされてきた、という風なのである。そのため、私は星雲のCGが流れ続けることには苛立つが、そのシークエンスがなければ今回の作品は存在意義自体がなくなると直感的にはわかるので、最後まで観たら感動できた。特異な「テレンス・マジック」である。