a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

The Wind That Snakes the Barley (2006) - 撮り方がリアル

Ken Loach監督

 

 戦闘の撮り方がよい。鑑賞者としての感覚では、戦闘を撮ることを前提として人物配置や建物が設定されたのではない。あくまでも空想的には地理上偶発して起こった戦闘を、うまく苦心しながら撮った、という印象がある。これは卵が先か鶏が先かという一般的問いにも似ている。もしリアルな戦闘を描きたいのであれば、製作者はそれを生み出す前に「リアルな戦闘の完成品」を想像することすら難しい。あくまでも、戦闘を発生させてから、どう撮るかを想像しなければならない。撮り方がリアルであるとは、そういう細微な哲学的観点であると私は思う。

 概して、映画はすべてがリアルである。現実世界をそのままフィルムに収めるのだから、当たり前の性質である。小説や戯曲とは異なる。だから、本作の撮り方がリアルというのは、当然一般論を繰り返し言っているのではなく、その作る工程の繊細さのことである。