a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

La Dolce Vita (1960) - 断片、糊

Federico Fellini監督

 

 セレブに群がるパパラッチと、乱痴気騒ぎが描かれる。これを断片とする。次第に、これら断片が提示されていき、しまいに現れるのは腐ったマンタと絶世の美貌を持つ少女である。少女は、乱痴気騒ぎを起こしてついに疲れ切った大人たちを、実に生き生きとした笑顔で見つめる。そして、Nino Rotaの音楽が静かに流れはじめ、終幕した。見事な映画であった。生き生きとした少女は処女にちがいない、処女でなければ映画の主題が保たれない。恋人はいるのかと聞かれたら、「恋人なんて」と顔を背けるような少女として描かれる。彼女もまた、断片である。すべてが、夢である。途切れ途切れに現れる主題は、それぞれが夢想である。

 それらをつなぎとめるのが、監督と観客の同質性である。実は、Fellini自身も夢を追いかけて生きていたい。のちに作品が完成し、それを観に来る観客も、現実から離れて夢見たい。素晴らしいまでの目的の一致を、ここでは糊と呼ぶ。それぞれの断片が、作品単体を超越した人間性同士の融合によって、糊付けされる。