a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

隠し砦の三悪人(1958) - 力強いストーリーの変遷を観る。

黒澤明監督。

菊島隆三小国英雄橋本忍黒澤明脚本。

ストーリーの運びが非常に力強い。精神的にも身体的にも元気な監督が撮ると、自然とストーリーに自信がみなぎってくる。秋月の戦いに敗れ、捕虜になり、脱走し、金の延べ棒を得る。ここで三船敏郎が出る。より大量の金の延べ棒があると可能性が提示される。山名に追われる、山名領に入る、山名から逃げる、捕まる、また逃げる、早川領に着く、ハッピーエンド。この過程で、大量にあった金の延べ棒はだんだんと少なくなっていき、最後には大判一枚で終わってしまうというユーモア。『老人と海』みたいなもので、探索することが主目的なストーリーは、後半にはその探索した成果を奪われんとする壮絶な逃げに変貌する。映画的には行きと帰りの運動を取り入れられるということ、ストーリーとしては一つの探索で二倍のストーリーが生まれるという美味しさがある。なかなかの脚本である。

さらに、『七人の侍』ほどの表情の生き生きさは無いかもしれないが、自然の中を歩き回るしぐさとそれに付いて回るカメラ動きの良さ、自然の美しさもシネスコで堪能できるという映画的佳作である。