a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

Paris, Texas (1984) - 三原色に気を遣った作品を観る。

Wim Wenders監督。 ひとつの部屋の中に、青く照らされる区画と緑に照らされる区画、そして赤のソファーが設置されている場所があるという具合に、画面の中にそれぞれの原色対立が見られる作品。色が人間の感情を支配し、背景が緑の中に佇む人間は息子を取り…

Les Amants du Pont-Neuf (1991) - ブルーレイで観たい映画no.1

Leos Carax監督。 恋愛に対する非常に真面目な映画である。よく見かけるパターンの中では、男と女が出会いそこでいきなり裸になって抱き合うのであるが、本作は恋愛を描く画面の上で女の裸に頼っているものではない。互いに身体に不具合があるからという理由…

Lights in the Dusk (2007) - 純愛を観る。

Aki Kaurismaki監督。 本作はなかなかの恋愛映画であると思っている。それは実は主人公の恋愛ではなく、ソーセージ売りの女の恋愛なのである。本作を観ればわかるけれども、主人公は自分の人生はまだまだ捨てたものではないと、空想をして孤独な性格である。…

Lost in Translation (2003) - Sophia Coppolaの人間性そのもののような映画を観る。

Sophia Coppola監督。 私はこの監督に、映画の将来を託しているところがあって、それはシークエンスにおける役者の表情応答に対する繊細な感性にある。他の映画には観られないほど、登場人物が目の前の出来事をどう受け取ったのかということに非常に拘る。本…

(500) Days of Summer (2009) - ありきたりな様でありきたりに見えない恋愛映画を観る。

Marc Webb監督。 恋人との一連のストーリーを、ほとんどランダムに1日ずつ編集していくという手法で、面白いといえば面白い。ありきたりにもなりがちな王道ストーリーなので、一から十までを淡々と作成するよりも、500日のなかから183日、、24日、、、と切り…

Marie-Antoinette (2006) - 不妊に悩むマリー・アントワネットというまさかの展開を観る。

Sofia Coppola監督。 Kirsten Dunstは『メランコリア』を観たときに、あまりに意気地のない演技を感じて私は絶望をしたものであるが、本作においては非常に輝いてみえる。Sofia Coppolaとは息が合うのだろうか、推測の域を出ないが、おそらく要求されたこと…

Wild Things : Foursome (2010) - 女が入れ替わり立ち代りのストーリーを観る。

Andy Hurst監督。 Wild Thingsシリーズも遂に四作目を迎え、ストーリーの組み立て方はそのシリーズとまったく同じである。放蕩息子が居て、父の莫大な遺産を継ぐ。しかし、その遺産は遺言によりほとんどが得られないことがわかる。次に放蕩息子にレイプされ…

隠し砦の三悪人(1958) - 力強いストーリーの変遷を観る。

黒澤明監督。 菊島隆三、小国英雄、橋本忍、黒澤明脚本。 ストーリーの運びが非常に力強い。精神的にも身体的にも元気な監督が撮ると、自然とストーリーに自信がみなぎってくる。秋月の戦いに敗れ、捕虜になり、脱走し、金の延べ棒を得る。ここで三船敏郎が…

七人の侍 (1954) - 表情に対する素晴らしき光の陰影を観る。

黒澤明監督。 人間本来の可能性を存分に目で感じることのできる作品。それは、七人の侍や百姓が、一聞すれば不可能に思えることに挑戦しているというストーリーの構成だから可能性を感じるのではなく、画面から観客の目に確実に伝わる圧倒的な表情の躍動感に…

Damage (1992) - おとなしい逢引映画を観る。

Louis Malle監督。 並の映画よりは明らかにカメラワークが上手であるが、やはり欠点も多い。冒頭でJuliette Binocheがパーティーで登場した場面、普通の人間は見ず知らずで本作の画面のように非常に近い距離まで寄って会話することは、まず無い。それは、会…

Holy Motors (2012) - 贅の限りを尽くした、映画未来への希望の予感を観る。

Leos Carax監督。 ここまで、画面のひとつひとつの構成が綺麗な映画は稀有である。昼と夜を明確に意識して使い分け、特に夜のパリの質感は監督の得意とするところで、本作で芸術の域にまで達した。ネオン灯のオレンジ、自動車のキセノンライトによって表現さ…

Boy Meets Girl (1984) - 大きな透明窓という装置を観る。

Leos Carax監督。 フランス監督のある一部は、『カイユ』紙などで映画批評をして働き、その後に監督業を始めている。そのような経歴を持つからか、もしくは自然に、映画に商業性を求めるよりはむしろ芸術性を追求する傾向を持たれているように思う。その場合…

The Great Gatsby (2013) - 憎たらしいGatsbyの表情を観る。

Baz Luhrman監督。 何が一番良くないのかといえば、ユーモアの要素がゼロである点である。驚くほどに、まったく無い。装飾が派手か否か、役者の表情をdetail shotで撮るのか否か、そのような微妙な振れ幅がある要素ならまだしも、ユーモアの要素を入れる気が…

Mauvais Sang (1986) - 漆黒の艶を観る。

Leos Carax監督。 画面がすばらしい。夜のショットに富んでいるので、その分だけ漆黒さを帯びるシークエンスが続く。夜の撮影は、ロケーションも含めて調整が大変なので、その志には非常に好感を持つ。アメリカの夜と言って、昼の露光があるショットを夜であ…

La Nuit americaine (1973) - 映画の愛にあふれるために観る。

Francois Truffaut監督。 映画世界の中に監督のにおいのする映画と、しない映画。もう近年の映画一般ではめっきり監督のにおいがしなくなり、CGによる人工的なにおいしかしない。プラスチックが地球の環境に良くない様に、CGばかりを観ていては映画を感受…

Une Belle Fille Comme Moi (1972) - 色情症のファムファタルを観る。

Francois Truffaut監督。 出演者の表情と個性を大切にして、それを最大限に活かす映画を撮るということで、Francois Truffautは監督の中でも随一の志を持っている。但し、即興ではない。細かく腕の先の指の位置にまで注文をつけるまでに気を配った上での、個…

Fahrenheit 451 (1966) - 転落から地獄へ、そして天国へと昇る映画を観る。

Francois Truffaut監督。 書物が禁止された国という、アンニュイな雰囲気の映画。全体主義の政府を設置することは、本作のようなタイプの映画には常套である。『未来世紀ブラジル』『時計仕掛けのオレンジ』は、本作よりも後に作られた作品であるが、同じく…

Les Quatre Cents Coups (1959) - 躍動する少年の鮮烈な匂いを観る。

Francois Truffaut監督。 Jean Constantin音楽。 奔放な少年の匂いが近くまで届きそうな、物体のイメージが鮮烈に残る作品。最後どのように終わるのかと興味をもって観ていたら、少年の静止画のクローズアップである。最後の最後まで少年のイメージが目の奥…

Close Encounters of the Third Kind (1977) - ワクワクさせられるストーリーの醍醐味を観る。

Steven Spielberg監督。 John Williams音楽。 最終的に宇宙人と対面することになる、そこまでのプロセスが非常に良い。ストーリーは一般に、一番大切な事を最後の最後にはじめて開示するように持って行く。本作はその教科書。一度船体を観たと思ったら、しば…

Les Mistons (1958) - 子供への無限の可能性を観る。

Francois Truffaut監督。 本作から二つのことを感じた。ひとつは、子供に対する無限の可能性と監督のそれに対する絶対的な信頼感だ。ふたつは、大人は運命に翻弄されるが、子供は運命から自由であるという事実である。この意味で、かなり哲学的な映画である…

Terminator 3: Rise of the Machines, T3 (2003) - 豊かな感情があった機械を観る。

Jonathan Mostow監督。 ストーリーは普通である。最後、爆弾を咥えさせられて機械であるはずなのに泣いているT3を観て、そもそも本シリーズは機械に豊かな感情があるという世界観だったのかとストーリーに疑問にも思ったが、逆に良いショットだったかもしれ…

思い出のマーニー (2014) - 女同士の愛情を観る。

米林宏昌監督。 どことなく、中盤までのストーリーがレズ映画のそれと似ている映画。登場人物の性格から、ストーリーの運びまでそっくりである。言い換えれば、未成年や子供であっても、大人と同じ感情表現が可能であるということの証明である。 ストーリー…

ハウルの動く城(2004) - 世界と愛を動かすのに三分しか必要でなかった映画を観る。

宮崎駿監督。 最後、ハウルの城が瓦解してから、ストーリーの勢いがある。カブの呪いが解け、ハウルと主人公が結ばれ、しかも世界中の戦争が終わるまで、わずか三分である。本作にとっては、世界と愛を動かすにはたったの三分だけあればよい。残りのストーリ…

Polish Wedding (1998) - 音楽に頼りすぎな映画を観る。

Theresa Connelly監督。 人物の会話や行動に違和感が多いのと、撮影の仕方がやや単調である点が気になる。メインテーマの映画音楽を、編曲をかさねて常に流し続けるようなスタイルである。映画としての画面を撮るための文法は、多少なりとも存在しているはず…

Le Havre (2011) - 濃縮される映画を観る。

Aki Kaurismaki監督。 緻密にストーリーを構成する監督の、かなり緻密に組み立てられた作品。というのも、本作は90分程度の長さしかない。そこに、不治の病とそれを夫に隠す妻、移民問題と移民を隠れて支援する主人公と近所、という二つのシナリオを混在さ…

The Man Without a Past (2002) - 人生に真剣な作品を観る。

Aki kaurismaki監督。 記憶を失い、知らない街で一から生活をはじめる主人公。街で知り合った女性(後に結ばれるシナリオになっている)、過去の妻の存在、そして妻とは上手く言っていなかったという事実を後から知ることになる。よくある展開であるが、画面…

Drifting Clouds (1996) - 本来的な人間劇を観る。

Aki Kaurismaki監督。 順風満帆そうな夫婦が居る。ふと、夫がリストラに合ってしまう。そして夫が再就職に苦労しはじめていると、妻もリストラに合ってしまう。そして何をしても上手くいかないうちに、税金逃れをしているなどと因縁をつけられて警察の影も忍…

Take Care of Your Scarf, Tatiana (1994) - 男と女の視線が交差する一瞬を観る。

Aki Kaurismaki監督。 男と女がいて、女はヒッチハイクで後から車に乗ってくる。全体の2/3が終わるところまで、彼らの仲にはなんら進展が起きず、女は男のことを「フィンランドの男って嫌ねぇ」といった風に陰で悪口を言っている。しかし、ふとした瞬間、運…

Leningrad Cowboys Meet Moses (1994) - モーゼがまさかの独裁者という展開を観る。

Aki Kaurismaki監督。 モーゼが出てくるので何事かと期待して観たら、前作の独裁者がそのまま名前を変えて出てきただけという、独特な肩透かしをくらう映画。即興演出である点も前作と変わらない。 ハリウッド映画のような仰々しい敵が存在しない。本シリー…

Leningrad Cowboys Go America (1989) - 北欧の即興劇を観る。

Aki Kaurismaki監督。 即興的にストーリーが構成される映画である。独裁者という属性のキャラクターが登場するのであるが、史実を基調とした主人公が独裁者である場合を除いて、この属性を持つキャラクターが出てくるのは珍しい。