Aki Kaurismaki監督。
本作はなかなかの恋愛映画であると思っている。それは実は主人公の恋愛ではなく、ソーセージ売りの女の恋愛なのである。本作を観ればわかるけれども、主人公は自分の人生はまだまだ捨てたものではないと、空想をして孤独な性格である。そこに、あからさまにアプローチをかけてくる女が現れるので、その女の嘘に正直に入れ込んでしまう。これがこの主人公の弱いところ。一方で、なじみのソーセージ売りの女の方は、主人公のことがおそらく前から好きなのだろうが(それか、何かと気にかかって心配になり、世話を焼きたがる風である)、主人公は自分の人生のことに精一杯なのでその微妙なニュアンスには終始気づかない。
この人物設定の上で、話が進む。主人公がだんだんと転落していくので「敗者三部作」などという人もいるらしいが、私はこれはまともな恋愛映画であると思う。90%か99%の自信を以って、これは恋愛映画である。