a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

Mary Jane's Mishap(1903) - 映画萌芽期の天才。

George Albert Smith as director もしかすると今の映画監督よりもいくつかの点で巧くとっている可能性すらある。まず、画面の対称性を明瞭に描いている。壁にかけられた何かによって山形の対称形が作れている。また、目を引くのは黒猫の存在である。映画に…

Grandma's Reading Glass(1900) - 創意工夫を観る。

George Albert Smith as director 映画が誕生して間もないのに、よく虫眼鏡のような撮影方を考えたと感動する。そして一世紀前の鳥と猫は、今とまったく同じ外見をしているのだと感慨深い。この一世紀で外見が大きく変わったのは、他でもない映画なのだろう…

Dough and Dynamite (1914) - 監督初めてのクローズア ップ。

Charles Chaplin as director Chaplinが監督を務めた中で、おそらく最初のクローズアップなのではないだろうか。パン屋でのドタバタ劇の中で、恋愛喜劇だけではなく労働者とストライキという複数の軸で展開しているから楽しい。 この時代は基本的に全編がロ…

Those Love Pangs (1914) - 当時の劇場

Charles Chaplin as director 当時の劇場を見ることができる貴重な映像でもある。もっとも、そのスクリーンは見るも無残にやぶられてしまうのだが。 相手をフォークで刺したり、湖に突き落とした相手が這い上がってくるのをさらに阻止するといった行動は、後…

The New Janitor(1914) - エンターテイメントの手本

Charles Chaplin as director 驚くほど良くできている掌編である。強盗が入ってきて、雑用係であるChaplinがその強盗をやり込め、ヒーローになるという骨組みである。2010年代のアメリカのヒーロー映画は、この骨組みを未だに使いまわしている。応用するので…

Say It Isn't So (2001) - プロットの才能を観る。

J.B. Rogers 監督。 脳卒中で半身麻痺になっている人物が後半になると元気になり、変わりにその夫の妻(彼女は悪役である)が発作を起こして半身麻痺になる。主人公はsister fuckerであり変態であるといわれたが、後にその女は実の兄妹ではないことがわかる…

His New Profession(1914) - 「Help Cripple」

Charles Chaplin as director 「Help Cripple」の看板を奪い、自分が看護を頼まれた足を怪我している人の上に乗せ、得た金銭を騙し取る。これのどこがProfessionなのだと突っ込みを入れたくなる。こういうユーモアがたのしい。

The Masquerader(1914) - 女装が光る。

Charles Chaplin as director 『つらあて』で女装をしたチャップリンが、本作では話の脈絡がある女装をしていて面白い。冒頭から最後まで女装をされては単なる女方なので、男が女に扮することの奇妙さを笑いにかえられる本作のような仕掛けが映画には欲しい。

Recreation(1914) - 池の暗示を観る。

Charles Chaplin as director 背景に広がる池を見て、これは絶対最後には全員池に落ちるに違いないと思って、果たしてその通りになる。なぜそう思ったかというと、以前にも同じようなストーリーを作品を彼が出しているからである。本作は機械的に作った間に…

The Property Man(1914) - 笑う観客のシーンを観る。

Charles Chaplin as director 観客が笑っているシーンが特徴的である。それは本来は私たち観客の立ち居地である。それが画面の中で提示され、私はそれにつられて少しだけ笑ってしまう。

The Fatal Mallet(1914) - 子供も容赦なく蹴る様を観る。

Mack Sennett as director このフィルムは子供に対して暴力的でユーモアが無い。役に対しては子供も大人も一切の区別がないのであった。子供には子供なりの社会への関与の仕方、大人には大人なりの規範というものが現在にはあるが、昔はもっと曖昧だったのか…

A Busy Day(1914) - 女装したチャップリンを観る。

Charles Chaplin as director 『とんだ災難』にひきつづきメガホンを取ったチャップリンが、急に女装して登場した作品。どうして女装しようと思ったのだろうか。タイトル通り殴る・蹴るに忙しい。チャップリンの映画で殴るとは腕を伸ばして水平にたたきつけ…

Caught in the Rain(1914) - 夢遊病の女

Charles Chaplin as director 全体的に工夫に富んでいる。恋愛喜劇と雨の関連性が薄い気もする。夢遊病の女がストーリーをかき乱していくのが面白いと思うが、ハロルド・ロイドの出演作にも夢遊病の女が出てくる。しかし、最近の映画に夢遊病の女はみかけな…

The Star Boader(1914) - コメディカルなモンタージュ

George Nichols as director George NicholsとChaplinの組み合わせで一番高度な映画じゃないだろうか。子供が不倫現場を幻灯機で撮って公開し、大人たちが修羅場になる。夫は不倫した男をなぐり、妻は幻灯機で取った子供をおしおきする。それぞれのシーンが…

Cruel, Cruel Love (1914) - 失恋自殺を観る。

George Nichols as director 毒の水を飲むところがおもしろい。その水が実はただの水であったというのは古今東西でコメディの常套手段である。一世紀前の人も失恋によって感情を害して、自殺まで考えるのかと思った。

His Favorite Pastime (1914) - 回転ドアの楽しさを観る。

George Nichols as director 回転ドアに三度も四度も転ばせられる様子を観ているとたのしい。それ以外の点で独創的なところは無いように思われる。

A Thief Catcher (1914) - 消失を免れたフィルムを観る。

Ford Sterling as director 2010年に発見されたら中にChaplinが出演していたという驚きのフィルムである。というのもそれまで彼を研究していた人ですらこのフィルム存在を見落としていて、消失や劣化する過去の映画が沢山在る中で、偶然見つかったのであった…

Kid Auto Races at Venice (1914)- 当時のカーレース

Henry Lehrman as director 当時のカーレースは動力自動車ではなかったのかと思い新鮮であった。

Between Showers (1914) - 軽快なコメディを観る。

Henry Lehrman as director 暴力沙汰は非日常的なフィクションであるにせよ、当時の風景をそのまま切り取ったような作風が私を安心させた。Chaplinは常に弱者の側に立っていたから大衆に愛されたとする構図的解釈が一般的に言われるが、それは違うと思う。弱…

The Yakuza (1974) - 文化の美しい衝突を観る。

Sydney Pollack監督。 いい映画であった。風呂場での殺人シーンが凄いと思う。魚のごとく刺すという比喩が似合いそうなそのシーンは、他の暴力的な映画のどこにも観たことがなかったので、久々にスリルを味わった。 「道」という単語にはさまざまな種類の道…

Underworld(2003) - SF映画は賞味期限がある。

Len Wiseman監督。 未知の感染症によって人類の統合性が失われていくのだと思いつつ、このような映画はだんだんと廃れていく直感はある。あまりにも続編を作りすぎた『バイオハザード』が終に終幕するとき、未知の感染症を主題とするSFも終了するのだ。とい…

Fever Pitch (2005) - たのしい恋愛映画を観る。

Bobby Farrelly, Peter Farrelly as director まじめな恋愛映画。二人が感情をすり合わせながら愛情を育む様子が丁寧に描かれている。そして、たかがゲームに対する男と女の一般的な感じ方の違いが、極めて鮮やかに描かれている。何に傷つき、何に価値観を置…

Hotel Chevalier (2007) - 普通の作品を観る。

Wesley Anderson監督。 特に感想が持ち辛い短編である。カメラをレールに乗せて水平に移動させるのは楽しい撮影法ではあるけれども。

The Darjeeling Limited (2007) - ロードムービー未満

Wesley Anderson監督。 単調でつまらない。ロードムービーのおもしろさに必要な、旅の出来事のギャク性と意外性があまりにも無い。蛇が逃げたら、それが別の客室にすべりこみ客室乗務員の女に噛み付くとか、多少なりともギャクの要素が欲しい。しかし、本作…

Fanny and Alexander (1982) - 映画のほぼ全てがこの一枚に入っている。

Ingmar Bergman 監督 監督が自ら引退宣言をして残した作品の中で、おそらく最もすばらしい。すべてのシーンのスクリーンプレイがなめらかであり、不自然な箇所が見当たらない。その意味で、虚構であるのにあたかも現実の一家族におきた出来事を描写している…

Death in Venice(1971) - 美しい白粉。

Luchino Visconti監督。 風景をなめまわすような主観ショットが印象的。真理や人間的尊厳を音楽として追究する中で、ベニスで出会った少年の絶対的美に出会ってしまい、その美を自らの哲学に統合できずに居る。なぜなら主人公は絶対に老人であり若さは戻らな…

NINE 1/2 WEEKS(1986) - 果敢な負け戦-目隠しの食事-を観る。

Adrian Lyne監督。 全体的に画面の色調が暗い。多少くすんだ画面を好む人もいるだろう。恋愛映画に暗い色調は合わないと本作を嫌う人もいるだろう。フィルライトが足りないので人物の表情が影になり見えないこともあれば、逆光で風景がぼやけることもある。…

Me, Myself & Irene (2000) - 凄く笑うことのできるコメディを観る。

Bobby Farrelly, Peter Farrelly as director スクリーンプレイが上手であった。主役の二人が、このような役の演技は慣れっこであるとでも言うかのようにこなれているので、微妙に感動が醒めるようにも思う。『マスク』、『ブリジット・ジョーンズの日記』と…

Chungking Express(1994) - 恋愛映画でハンディカムが最も生きた作品に対して。

Wong Kar-wai監督 男と女の距離が非常に近いことに驚く。それぞれ他人であっても、まさに恋する惑星の下では触れるだけで恋人になれる。映画的説得性をもって、この超常的惑星を描写することが大切なのだが、本作はハンドカメラによる近接撮影と、静止画をま…

Moonrise Kingdom (2012) - 凝った配置を徹底する映画を観る。

Wesley Anderson監督 子供が出ているからといって映画が子供だましなのではない。むしろ本作では高度な技術が続いており、十分に大人な映画である。単純なカメラワークと強引なストーリーによる映画の方が子供だましであると感じさせる。 登場人物が直線状も…