a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

Wild at Heart (1990) - 力強さを観る。

David Lynch監督。 映画史上でも謎であろう、天使が舞い降りてくるショットがラスト付近にある。この天使によって、唐突にアンハッピーエンドがハッピーエンドへと180度転換される急激な力が映画に加わる。そこから5分たらずのうちに「Love Me Tender」…

The Pianist (2002) - 突然の優等生的作品を観る。

Roman Polanski監督。 「赤い航路」、「フランティック」で慣れ親しんできた私としては、Roman Polanskiどうしたといった感覚で、彼のオリジナリティが全く無いと思った。本作で目を見張るのは、リアルで予算をかけたセットと爆薬、Adrian Brodyの演技くらい…

Underground (1995) - 画面にほとばしる才能を観る。

Emir Kusturica監督。 カンヌでパルムドールを獲るというのは、ある明瞭な文化的メッセージを強力に描写できる実力を指すと思う。監督の『Arizona Dream』は、実力はあったが文化的メッセージは皆無に等しい。(しかしヴェネチアで銀熊は獲った。)本作は、…

Summer Interlude (1951) - ショパンのピアノピースを使い切る音楽感性に対して。

Ingmar Bergman監督。 Chopinの音楽が効果的に用いられている。『The Pianist』もChopinが多用されているが、あまり音がストーリーをうまく修飾しているようには思わない。本作は、主人公のいわば夏の夢のような感覚を、Chopinでうまく表現していた印象にあ…

The Conformist (1970)- 画面の対称性を観る。

Bernardo Bertolucci監督。 主人公と教授という二つの軸で進行するかのように見えるが、実際には主人公の妻と教授の妻という別軸が機能している。一方、画面の対称性を意識した描写を心がけており、それぞれのショットに綿密な検討の跡を見ることができる。…

Smiles of a Summer Night (1955) - 映画表現の追究を観る。

Ingmar Bergman監督。 映画において、最も映画らしい表現を追及している監督であると私が考えているImgmar Bergmanの出世作の一つ。 彼の良さには、通常の映画においてはカットするべきシークエンスをカットしない点がある。それが、彼の追及する意味での映…

Bitter Moon (1992) - 独善と偽善がばれる瞬間を観る。

Roman Polanski監督。 踊りを入れたシーンが上手い。『フランティック』のときにみせたEmmanuelle Seignerのダンスホールでのダンスは、ホールの小ささとその中でごったがえす人いきれの非日常感を、瑞々しい感性で映像化していた。そのときに私が感じた感動…

Week-end (1967) - 現存する中で最も天才的である映画を観る。

Directed by Jean-Luc Godard 軽快さと清涼感のある即興演出にも似た作りを持つにも関わらず、その表現する内容は他のあらゆる映画の追随を許さない。Godardでしか起こらない現象が、本作において最も凝縮して堪能することができる。 例えば、現代音楽は絶望…

El Topo (1970) - Therapy Picturesを観る。

Alejandro Jodorowsky監督。 監督の話すことにはtherapy picturesと云って、社会的なものごとへの絶望を救済するような映画が求められている。本作はまさにそれをストイックに実行したものであり、映画人としてのかくあるべき姿を示している点において普遍的…

City of Women (1980) - 国ごとの女の個性を観る。

Federico Fellini監督。 国による映画感性の違いとは、ひとつには女の人間社会に対する振舞い方にあるのではないか。どの国の映画においても、男の社会や家庭への関わり方や、人生に対する価値観がいかにステレオタイプで単純であるかという点において男はい…

8 1/2(1963) - 後代への圧倒的な抽象的構造の影響力に対して。

Federico Fellini監督。 大画面で観たい映画。演者がうしろを向いた状態でふりむく構図を豊富に含んでいる。映画のストーリーはすべて具体的なものかと考えており、500作品以上を続けて観ているとそのために映画の可能性について多少飽きてきたところで、…

Ascenseur pour l'echafaud (1958) - フランス映画のお手本を観る。

Louis Malle監督。 殺人犯が証拠を隠滅しようとたくらむ途中でエレベーターの中に閉じ込められてしまうという、まさに本作は死刑台のエレベーターである。殺人犯が閉じ込められてしまっただけでは映画の尺が保てないので、その殺人犯の車を盗んで好き放題す…

Match Point(2005) - 普通のシナリオを観る。

Woody Allen as director 基本を基本として着実に実行する監督である。冒頭の面接を描写するシークエンスでは、面接官を中心におくショットでは画端に主人公の後頭部を入れるが、非面接者である主人公が中心であれば彼一人を映す。登場人物の心理的な距離感…

Being John Marcovich(1999)- 穴の空間感覚を観る。

Spike Jonze as director 普通の映画における法則として、全体の1/3が時間経過した際にはメインストーリーが展開済みである必要があるが、本作においては例外である。いつまで経っても、ストーリーがどのように展開するのかが見えない。そこが面白いのだと…

Lovers of the Arctic Circle(1998) - だらしない男を観る。

Julio Medem as director 本作ほどシネマスコープの必要性が無かった映画は見当たらない。時折監督もその端のスペースをもてあましている。ビスタサイズでよかった。 最後アナは交通事故で死んでしまうが、まさか道路を白目を向きながら引きずられていくとは…

Back to the Future (1985) - 試行錯誤された映画を観る。

Robert Zemeckis as director 荒削りのコマまわしであるが、作者の伝えたいストーリーが明確であることと、登場人物や社会がオプティミスティックであることが幸いし、荒削りであることすらも本作にとって良い個性であるかのような印象を与える。実際にいく…

Belle de Jour (1967) - ユーモアを観る。

Lusi Bunuel as director 映画として問題のある箇所が無い。シュールレアリストとして世に認められた、もしくはそう世間に認識されてしまった人間だけあって、監督の放つ独特なショットはシュールでユーモラスにすら感じる作品である。突然レストランで机の…

Winter Light (1963) - 表情の仮面を観る。

Ingar Bergman as director 女の表情は仮面である、という鋭い考察を演者にしゃべらせ一途な女の性を描く。本作の監督の演出は、その定義を曖昧に置いておいたとしても、もっとも映画らしい。小説でもやらなければ、音楽にも不可能な領域で、かつ映画でしか…

Repulsion(1965) - 不協和音の正しい使い方を観る。

Roman Polanski as director カトリーヌ・ドヌーヴがどうして圧倒的な主人公級女優であったのか、本作から読み取ろうとした。『インドシナ』『昼顔』でも感じた、男から無理やりにでもキスされてしまう確率の多さ。精巧に整った容姿で他者を排斥し寄せ付けな…

The Virgin Spring(1960) - 的確な描写力を観る。

Ingmar Bergman as director だれが見てもお嬢様育ちの娘が居る。とても世間知らずなのだ。ある日村から別の場所へと遠出をすると、明らかに人相の悪そうなごろつきに出会うのだが、世間知らずだからそいつらが悪だとはわからない。もちろん観客は彼らが悪役…

The Seventh Seal(1957) - 世紀末を観る。

Ingar Bergman as director 突如として自らの目の前に死神が現れ、その予感に囚われながらも発生するロードムービーである。そのため二つのストーリー展開軸があるように思う。ひとつは主人公が死神という要因により死ぬのではないかという、死という時限爆…

鶴八鶴次郎 (1938) - 女によって主導されるストーリーを観る。

成瀬巳喜男監督。 女が気まぐれであるだけで恋愛を主軸とする映画がいかに面白くなるかという事を、本作を観て学ばさせて貰った。

The Quiet (2005) - 不思議な作品を観る。

Jamie Babbit監督。 指し示していることが常に不明瞭であるような、とらえどころの薄い作品。親に性的虐待を受けている娘と耳の不自由な娘がストーリーに与えられた。作品は主人公の語り調子であるが、この語り調子はどちらかといえば文学風な使い方であって…

Gran Torino(2008) - 近所の諍いにまきこまれ死ぬ様を観る。

Clint Eastwood監督。 伴侶を無くして呆然としている男が人間への愛情を取りもどすストーリーと近所の諍いに巻き込まれて死ぬというストーリーが、うまく混在して展開されている。近所の諍いに巻き込まれた戦死だけでは、コミカルではあるが感動をする要素が…

Broken Flowers(2005) - コツコツ積み上げてきて、最後に無に帰する映画を観る。

Jim Jarmusch監督。 最後がおもしろくて、主人公ががんばって探偵してきたこと全てが無に帰すわけ である。世の中のほとんどは、ほとんど適当に出来ているということを、この映 画監督は教えてくれる。映画の中では多国籍に登場人物が居ることも、この監督 …

Night on the Planet(1991)-Winona Ryderの光る映画を観る。

Jim Jarmusch監督。 タクシーの中での人物描写を主とした映画である。住む世界が違いすぎている、 というのがドライバーと乗客の境遇における基本的な条件になっている。本作で 面白いのは、その境遇の違いを乗り越える会話にあるというか、シナリオの良さ …

Down by Law (1986) - バーで人と親しくなるような作品を観る。

Jim Jarmusch監督。 異なる国籍や背景を持つ人が、気軽に仲良くなれるというのがこの監督のいい所 なのである。かなり綺麗にまとまりすぎているところがあるようにも感じる。一 人で気軽にバーに行くと、バーに居る全員がそれなりに異なる背景を持つ大人で …

Stranger than Paradise(1984) - 映画における人間のエッセンスがわかる作品を観る。

Jim Jarmusch監督。 人がどうしたら仲良くなるのか、またどうしたら歩調が合わなくなるのか、その エッセンスがわかる映画であった。こういう人間の本質的な性質をたどることは 、映画における基礎的な部分である。観ていて楽しいものだ。

Limits of Control(2009) - 逸脱する映画を観る。

Jim Jarmusch監督。 最近のこの監督は、さまざまなジャンルのテーマに手を出している。ガードが沢 山居るアジトには「考えたら入れた」という、仰天な映画である。主人公のスト ーリーの目的に、あえて明示的な意味を持たせないという、無意味=意味を模索 …

The Match Factory Girl (1990) - 肉体労働者の苦悩を観る。

Aki Kaurismaki監督。 本作が何と似ているかと言えば、同監督の『罪と罰』とシナリオの本旨があまり変わらない。主人公は工場の肉体労働者であり、単純労働をしている。そして肉体的にではなく、精神的に何らかのフラストレーションを感じる。(『罪と罰』で…