「赤い航路」、「フランティック」で慣れ親しんできた私としては、Roman Polanskiどうしたといった感覚で、彼のオリジナリティが全く無いと思った。本作で目を見張るのは、リアルで予算をかけたセットと爆薬、Adrian Brodyの演技くらいのもので、Polanskiがいままでに魅せてきた妖艶なショットが、一切ない。他の役者は、そこまで印象に残るほどの演技をしていないが、逆に言えば刻々と変化する情勢に点々とつけられた絵のように、かえって深い印象がなく通り過ぎていった方が本作にとっては良いのかもしれない。
Roman Polanski監督好きには、観てもつまらない。監督は変態なのに、急に優等生を気取りはじめ、本当に優等生になってしまった作品である。