a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

2015-01-01から1年間の記事一覧

Black Cat, White Cat (1998) - ユーモアの大切さを観る。

Emir Kustrica as director ある意味では、Kustricaはまったく成長しない監督である。撮り方もモチーフも早いうちに完成し、まったくと言ってよいほど以後の作品に技術的な変更が少ない早熟した監督である。 代わり映えが無いといってもどの作品も面白いので…

Super 8 stories (2001) - 音楽への情熱を観る。

Emir Kustrica as director 音楽のリズムを感じる。それは映画のシークエンスにおける編集のリズムとも通じるところがあり、音楽を聴いているように映画を観れる。つまり編集の技術が音楽をつむぐようになされているところがあり、監督が音楽家でもあるとこ…

Time of the Gypsies (1988) - 浮き上がる花嫁を観る。

Emir Kustrica as director フェリーニの影響を色濃く受けている。花嫁の頭につけるもの(名称がわからない)がひらひらと飛んでいくが、舞い上がるのではなく水平に刺すように飛んでいく。花嫁も水平に浮き上がり、唯一心配するのは彼女が頭から下に落ちな…

The China Syndrome(1979) - まじめな映画を観る。

James Bridges as director 本作は主人公が孤独だから成り立つ。孤独な人間は周囲に協力が求められず、最終的には一人でなんでも解決しようとする。そのため、最後には主人公は具体的にテロ的行動に出たのであって、実力行使しようとする会社側との戦闘が盛…

North by Northwest(1959) - 映画は遊ぶもの。

Alfred Hitchcock as director 本作に特に面白い点はユーモアの多さにあると思う。冒頭でスパイたちに捕まえられて部屋に閉じ込められ、スパイの部下たちが入ってくる。てっきり殴られるのかと思いきや、散々に酒を飲ませられる。それもバーボンをコップにな…

The Holy Mountain (1973) - 「映画なんて観るな」と映画のラストで説教する非凡さに対して。

Alejandro Jodorowsky as director 『エル・トポ』に似た世界を踏襲しながらも、アイディアをさらに膨らませ、映画ならではの表現を沢山提示した作品である。映画鑑賞する上で更なる鑑賞を触発される。 初めに目を引いたのが、人間から出る体液がいかにカラ…

CASSHERN(2004) - 観るよろこび、感じるよろこび。

紀里谷和明監督。 原作漫画を知らないのでストーリーがよくわからなかった。ましてや世界観もわからなかった。どうも、これは戦争で退廃した未来世紀に人造人間が登場するという趣旨らしく、私はそこにゴジラのようなメタファーを感じたものである。昔、中沢…

The Birds (1963) - おそろしい鳥の大群を観る。

Alfred Hitchcock as director 私はどうもLove Birdの存在が気にかかり、実はLove Birdが鳥の大群をおびき寄せているのではないかと思ってみていた。逢引する口実として持ってきたわりには、最後の最後まで主人公たちのそばに付いてまわっていたのがこのLove…

City Lights (1931) - 目で見えないものが見えるという、映画の逆説を達成したことに対して。

Charles Chaplin as director 目で見えないものが見えるという体験は映画であれば一切期待することが出来ない。映画は映像で描写するのだから、映像で描写しないことは観えないと考えるのが普通である。だからこそ役者は表情の演技には余念がなく、本来はみ…

Vertigo (1958) - 色彩による感情描写と、原作の忠実な解釈に対して。

Alfred Hitchcock as director 人間の本質を描く、というのが本作の目的である。Hitchcockは色彩で人間の感情を表現し、音楽で人間の深層心理を描写できると考えていたようだ。ここには、色彩と音楽の明瞭な住み分けが存在し、互いの境界線を乗り越えること…

Grand Slam Opera (1936) - パントマイムとロマンスを観る。

Buster Keaton as director 彼の相変わらずのパントマイムの上手さと、典型的なロマンスストーリーを観ると安心する気もする。

Elephant(2003) - Fur Eliseの奇妙なマリアージュを観る。

Gus Van Sant as director BeethovenのFur Eliseが象徴的であるが、音楽の与える説話的意味という観点でみればFur Eliseである必要は無い。ただ、殺人犯がピアノの初級者でありFur Eliseを弾けなかった、というだけの意味でしかないが、かえって無意味=意味…

Magic in the Moonlight(2014) - 雑になってしまった映画を観る。

Woody Allen as director 考えたことを、一字一句声に出さないではすまないらしい。本作には、ひとりでカウンターで酒を飲み、思考にふける時間は一時も無い。常に画面には二人存在し、Colin Firthは思っていることを滞りなくしゃべるためには、かならず母親…

The Gold Ghost (1934) - 音が入ったキートン映画を観る。

Charles Lamont as director 映画に声が入った。しかし、Buster Keatonの映画のよさは、映画に声が入るかどうかとは完全に離れた場所で誕生しているらしい。その証拠に、彼の20年代の30分弱のコメディー映画と見比べても、本作には特段の進歩というものが無…

Adieu au Langage (2014) - 技量の衰えないGodardを観る。

Jean-Luc Godard as director 最後、二輪の華が映し出され、背後を車が走り去ると同時に、子供が生まれる。これは映画独特の暗喩である。モンタージュ文化からくる二画面性から発生した暗喩である。 Godardは映画の進化の方向を予知してか、結果的に先取りす…

Get Out and Get Under (1920) - シンプルな三人を観る。

Hal Roach as director 古典作品を観ると、そのシンプルさが心地よいと思う。それは、近年の映画が芸術的であるのかシンプルなストーリーであるのか、中途半端に見えるからである。たとえば、人間の性の問題ーそれ自体は重要主題であるがーに着目し、背景に…

Mademorselle (1966) - リアルな被写体を観る。

Tony Richardson as director cinema scopeの使い方や、切り返しショットの効果を理解されずに撮影されている。映画として残念なことである。移動撮影も無く、全体を通して単調である。 一方で、リアリズムに根ざしている点だけが、映像を詩的なものへと変容…

Persona (1966) - ベイルマンの実験映画を観る。

Ingmar Bergman as director 人間の二面性を追及し、特徴的なショットを作った。それは後半に登場する、二人の女の顔を半分でつなげるシーンであり、『Repulsion』で出てくる音楽を彷彿とさせる演出がされている。本来ありえない写真について、その異質さを…

ALL THAT JAZZ (1979) - 人生への愛を観る。

Bob Fosse as director 一瞥しただけでは混乱するような、非日常的なモンタージュを使う。そのため、目が慣れるか、二順目をしたときからがこの映画は面白い。そう、かなり複雑化したモンタージュを使用しているのである。死後の天使と思わしき存在と対話し…

4 Months, 3 Weeks and 2 Days (2007) - ヒロインの大敗北を観る。

Cristian Mungiu as director エンドクレジットのデュエットが要らないように思えてならない。モンタージュを終にゼロへと近づけることにより、対象の客観性を極めて厳密に獲得した作品。カメラと対象との透明な距離感により、さも現実の中絶を観ているかの…

Ma femme est une actrice (2001) - ライトワークを観る。

Yvan Attal as director ライトワークをしっかりと実行した映画。他の映画もライトワークが堅実に実行されているかどうかの視点を得ることができた映画であった。ホームコメディの範疇にある映画であると思う。Charlotte Gainsbourgが主演したが、日本では、…

Un homme est une femme (1966) - フランスらしい即興演出を観る。

Claude Lelouch as director カラーと白黒のシークエンスが混じっており、その使い分けをどのように定義しているのだろうと不思議に思っていた。実は、これは経済的な理由であって、屋外はカラー、室内は白黒と決めていたのだそうだ。経済的には制約があった…

L'Enfant (2005) - 音楽を使用しないことの良さを観る。

Jean-Pierre Dardenne, Luc Dardenne as director 決して悪くはないが、何か独創的に非常に秀でている点があったのかどうかは微妙な作品。もちろん全体的なレベルは高い。映画音楽からの独立をテーマとしているかのような作品に見えた。主人公のカップルが車…

Taxi Driver (1976) - すばらしい夜景を観る。

Martin Scosese as director 70年代のN.Y.を撮り、ベストな夜景を観せてくれる。その夜景のきれいな事、非常にすばらしい。『ポンヌフの恋人』がフランスの夜景でno.1の描写力を持つとすれば、本作はアメリカの夜景でno.1の描写力であろう。

Sex, Lies, and Videotape (1989) - 小奇麗にまとまった作品を観る。

Steven Soderbergh as director 地面をひたすらに取り続け、オープンクレジットが終了すると「Garbage」という脈絡のない一声で始まる映画。たえずカメラを微妙に動かしながらキャラクターを撮るスタイルである。私は本作を観て、自愛することの意味を悟った…

Spectre (2015) - 大量の爆発を観る。

Sam Mendes監督。 公表時点で歴代最高の制作費と、最長の上映時間である。大量の爆薬を使わなければならなかった理由は、一体どこにあったと言うのだろう。映画の撮り方にではなく付加価値の方に観客や広報の目が行ってしまうのは、映画が豊かだからなのか貧…

Fahrenheit 9/11 (2004) - 感情発露を観る。

Michael Moore as director 10分間の上映の後にオープンクレジットが示される。その後に来るのは、漆黒の画面に9/11の事故音源のみが流れるシークエンスである。この使い方は非常にうまい。 本作では、ブッシュ政権側の人間の感情発露を一切作品に乗せていな…

The Piano (1993) - 不思議な距離感覚の映画を観る。

Jane Campion as director 建物の位置関係に対して面白い着眼点に気づいた作品。女の主人公が不倫をする話である。夫の家と、不倫先の家はどれだけ離れた距離にあったのだろうか? 本作を観ると、ひとつか多くてもふたつの移動ショットをつなげただけで、こ…

Arizona Dream (1994) - 拳銃自殺の名シーンを観る。

Emir Kusturica監督。 自殺のシーンは見事である。落雷と発砲の同時発生、ピントは手前から奥の木へと移動する。彼女は落雷に驚いて引き金を引いてしまったような素振りもあり、リアリティを感じる。

Wild at Heart (1990) - 力強さを観る。

David Lynch監督。 映画史上でも謎であろう、天使が舞い降りてくるショットがラスト付近にある。この天使によって、唐突にアンハッピーエンドがハッピーエンドへと180度転換される急激な力が映画に加わる。そこから5分たらずのうちに「Love Me Tender」…