a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

The Man Without a Past (2002) - 人生に真剣な作品を観る。

Aki kaurismaki監督。

記憶を失い、知らない街で一から生活をはじめる主人公。街で知り合った女性(後に結ばれるシナリオになっている)、過去の妻の存在、そして妻とは上手く言っていなかったという事実を後から知ることになる。よくある展開であるが、画面の作り方が新しい。最後、主人公は女性を連れに行き、二人はなんと背中を見せて画面から去っていく! 画面からどう主人公が退場するかという時に、背中を見せてだんだんと遠ざかるという手法はあまり無い。奥行きに対する感性が強いということでもある。そして途中からは、その小さくなった二人を貨物列車がさえぎって終わる。この遠近感覚を物でさえぎる手法は、小津安二郎のフィルムとも通じるところがあるが、この両者の類似性にあまりの意味を持たせてしまっては、評論家気取りの性格を免れない。

記憶を失うことは辛いことであるが、実は記憶をなくす前にはより人生として辛い状況にあり、結果としては記憶を失って一から再建した新しい人生の方が、前の人生よりも上手く行ったという内容である。つまりは、過去の人生に執着するな。この映画は人生の教科書かもしれない。