a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

NINE 1/2 WEEKS(1986) - 果敢な負け戦-目隠しの食事-を観る。

Adrian Lyne監督。

全体的に画面の色調が暗い。多少くすんだ画面を好む人もいるだろう。恋愛映画に暗い色調は合わないと本作を嫌う人もいるだろう。フィルライトが足りないので人物の表情が影になり見えないこともあれば、逆光で風景がぼやけることもある。しかし人物の衣装の色が黒か白で統一されていることを考えれば、それはミスではなく意図的にしているのだとわかる。複雑な白と黒の表現を追及しているのである。

目隠しをして色々な食べ物を食べさせて貰うシーンは、成功していると同時に失敗している。というのも、観客はこの魅力的なシーンを出来ればまばたきもせずに見ていたいほどで、画面に注視するほど、目隠しをされた興奮をいうものを基本的に想起しない。目隠をした食事の官能性を、一番たのしんでいるのはキャラクターであり、映画観客は一番たのしんでいない。いわばこれが映画の宿命で、目で見えないものは映画では見えない。(それが例外的に観得たのはチャップリンの『街の灯』である。)その負け戦に果敢に挑戦した作品。このシーンでは負けてもいいじゃないかと。そこが映画として潔い。