Eric Rohmer 監督
フランスの雰囲気を感じたければ、この一本を観れば足りる。雰囲気というのはひと夏の自由な恋愛感情に他ならないが、一方で言葉の節々に哲学を、個人主義的思想も感じるだろう。日本は西欧思想を取り込んだ際にも、個人主義はどうしても取り込まなかったのだから、本作の登場人物たちの言動に憤っても無理はない。裏を返せば、即ちフランスの雰囲気を堪能している。日本人は直感的な嫌悪感によってフランス的な匂いを全て感じることが出来る、因果な国であろう。この国に日本的なるものを一切感じられないのは、そういう訳である。
スタンダードサイズで適切であり、画面には常に二人以上居る。人間に張り付いたような撮り方で、風景や海岸線は常に人物の背景として巻き込むようにしている。なめらかで上手い。音楽も、余計な音楽は一切入れていないから、メロドラマのような感覚は無い。メロドラマの枠に役者を押し込むのではなく、スクリプトが一応あって、役者の素の表情をカメラが張り付いて撮っているような感覚。この一見似ているようで違う表現者的立場があり、結果としてメロドラマよりもっとオリジナリティの強い作品になった。