Marialy Rivas 監督。
『アデル、ブルーは熱い色』というレズ映画が出て、私はあまり好きな作品ではなかった。青い髪をしたレア・セドゥがあまりにも奇抜すぎて、絵に描いたような主役風不良で、作品全体の斬新さを衒ったようで陳腐にみえた。
本作『ダニエラ 17歳の本性』はチリの映画、最近のフランス映画よりも瑞々しい作品である。主人公はいたって普通の女学生にみえるが、ニンフォマニアである。ドラマチックなストーリーになるわけでもなく、ニンフォマニアックな性格の女の、いたって普通の日常を写実的に描いた。だから他の映画よりも直球で伝わる。映画世界では当たり前となった思考法から一歩引いて、あえて主人公にヒロインの匂いを出さない。それが立派。
やはりこれをヨーロッパの監督がメガホンを取れば、どうしても主役をヒロインに演出したがるというか、ラース・フォン・トリアーの『ニンフォマニアック』のように悲劇を作る。西洋のレズ映画はきまって悲劇。主役の子は親に虐待され、あるいは無視され、もしくは転勤によって心に孤独をかかえているところからスタートさせるのが定石。そして人生を徐々に転落させることで観客の心を掴む。日本でも同じ。そういうお決まりが、最近私は臭くなって駄目だ。
本作は、これがまったく臭くない。さらにカメラもよく勉強している。主人公の独白の長さはフランス映画の雰囲気を感じなくもない。また独創的なことにはSNSやチャットという現代の表現媒体を巧みに取り入れ、ニンフォマニアックかつ電脳的な作品としている。すばらしい作品である。映画という媒体の閉塞感を打ち破る力のある作品。こういう趣向こそ評価される時代がいつかやってくるだろう。
(主人公は不特定の人間とチャットばかりしている。主観ショットが空想的でかつ電脳的に仕上がっている。)