Natalia Smirnoff監督。
アルゼンチンの映画だからといって、他国と特別変わっている点はない。特に、ある主人公の日常を描き、その日常の中にひそむ虚無を浮き彫りにしていく過程は『SOMEWHERE』との類似点を感じる。つまり、ストーリーとして根底としては似ている、と。
私はジグソーパズルの完成速度を競う世界大会があるとは知らなかったが、実際にはあるのだろうか。本作は、家庭において夫と子供達の影で自分を出し切れない妻が、その大会へ出場し、優勝して終わるというストーリーである。
なんと、多少他の映画と違うこととして、ただ優勝して終わるだけである。その大会をトリガーとして家庭で自分を出せるようになったという描写は無い点は特筆に値するだろう。妻は大会に出場するための練習時間もはじめは家庭に隠していたし、世界大会に出場することは、おそらく夫や息子に迷惑がかかる点を考慮しての判断であろうが、棄権することになる。つまり、本作のエピソードを通じて、自分の本当に好きな事で我を通す性格になったわけではない。
改めて言い換えるまでもないかも知れないが、大会という突発的な非日常に戯れるというのが、本来的な本作のストーリーである。妻は大会を通して強い人間に変化するのではない。その非日常ぐらいは誰にも干渉されずに守らんとする、彼女本来の性格を描写したのであって、その心意気や努力が人の感動を呼ぶストーリーになったのである。
堅苦しい分析は抜きにすれば、ジグソーパズルをひたすら練習するという、物珍しい映画である。オープンクレジット・エンドクレジット共にグラフィックが洒落ている。