a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Danse Macabre (2014) -ストーリーを錯覚させる音楽。

Pedro Pires監督。

女が首つり自殺をする。遺体は検死される。遺体に水がかけられ洗われる。心臓が運ばれる。死体は泣いている。棺にいれられる。そして焼却される。

硝子の割れる音がする。黒いカラスが舞い降りる。鳩が飛び立つ。椅子が寄せられる。ここまで人間は映らない。これが説話の特徴である。それぞれは、女が首つり自殺をするというストーリーを紹介するための、同一の説話意味を持っている。カラスおよび鳩は暗喩として、椅子が寄せられるショットは描写としてである。

ストーリーを錯覚させる音楽。死体が焼かれるという行為まで、ストーリーの範疇にある。しかし、女が自殺した=死体が発生した、というところまでは無音で、その後はまるごと一曲の曲がながれる。何かのオペラである。つまり、このように、映像で描写されるストーリーが、音楽のストーリーと完全に同調している場合。すなわち、映画におけるストーリーの被認識易性の低さ、ストーリーの盛り上がりの被認識易性の低さ、これを完成された音楽によって在るかのように演出する目的における音楽である。

棺の中で、遺体が重力にゆれているショットが良かった。死体が紐から次第に脱落してゆき、回転をする際に、手が地面を円回転でなぞるというdetail shotもよかった。