Steven Soderbergh監督。
邦題で『エージェント・マロリー』と題されているように、女スパイ映画の王道を行く映画である。 本作はキャストが極めて成功した。アクション映画では主役に格闘家出身者を起用することがあるが、本作の主役には女の格闘家が起用された。本作を観てしまうと、他の映画の女優がしているワイヤーアクションに満足できなくなる。様々な男の格闘家がアクション映画界で活躍しているように、アクションにおいては虚構が実在に負けるのである。また、彼女は初主演である。映画出演に慣れきった女優よりも、初主演させてもらった若い女優がすばらしい演技することがある。本作も、映画に特有の逆説的な配役成功があった。役者が経年するほど下手になるのではない。瑞々しさこそ熟練した俳優にはどうしても出せない個性であることがわかれば、本作の奥深さがより堪能できる。そして彼女は演じ切った。瑞々しい演技の女優が、疾走するエージェント・マロニーをまとっている。 この稀有な配役成功と監督の技量によって、本作はアクション映画で最も完成している。