a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

John Q (2002) - 社会派の映画とは、悪役を作らないことである。

Nick Cassavetes監督。

この作品の監督はおもしろい人で、本作のような真面目な作品ばかりを撮るのに、『ハングオーバー2』に出演している。『My sister’s keeper』を最近に撮っているので、医療問題系に興味でもお在りなのだろうか。患者と医師、弁護士がかならず出て来るのだが、誰をも的確に描写し、ひとりの役柄を悪者にするという事がないので、非常に好感している。

Denzel Washington演ずる男は、アメリカの低所得層の人間であり、ろくな医療保険に入らせてもらえない。アメリカは自助の国なので、保険に入っていなければ、疾患になった際に国家すらも助けてくれない。息子は重い心臓病にかかり(レントゲンの写真をみると、大動脈の左下あたりが真っ白で、肺がうっ血している。血液の拍出不全である)、自分の息子を移植リストに乗せろと、病院に拳銃を持って突入する。おまけに、自分の心臓で移植をしろ、と医師を脅す始末。悪役不在で、主人公の行動の善し悪しが微妙なストーリーである。当然のことながら、あえて微妙なストーリーにしているので、他の作品とは一線を画した社会派作品の属性を持ったのである。

(還元すれば、現実世界においては明瞭な悪役はマクロには存在しない。ミクロには、敵対する対話不能な上司など居るであろうが、全体観的には誰かの人生を阻害するために出生した人間は居ない。これは性善説性悪説の前提によって、捉え方が変化する。)

素人が一朝一夕に思いついた監禁事件なので、どこか緊張感に欠ける。その様子がリアルなので、プロのテロリストが悪役に配置されがちな映画界の中において、マイノリティで面白い映画になったか。