a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

Vers Nancy (2002) - ずっとしゃべりっぱなしの10分を観る。

Claire Denis監督。

『Ten Minutes Older, The Cello』に収録されている、オムニバスの一つである。

監督は移民とフランスについての関係を生涯のテーマにしているようで、本作はそのテーマの一貫として作られたのではないかと思われた。もっとも、インタビューの形式をとっており、インタビューされる男の話を延々と聞くことになるので、果たしてこれが映画なのか、もしくは別の映像媒体なのかが不明瞭である。しかし、ストーリーがあるか否かという観点では、最後にアフリカ系移民が列車室の中に入ってくるという出来事が起こり、インタビューされる男の主張の一部が実現していくような流れで幕を引いた。これは普通のストーリーである。

つまりは、たとえ120分であったとしても、本作のように10分であったとしても、次のように言える。90パーセント以上の映像が、ストーリーではなくてただの映像か、もしくは映像芸術であったとしても、のこりの10パーセントにストーリーの兆しを挿入できれば、映画全体がストーリーを持っているように思える。そのためには、映像の中に、エキストラではない登場人物が入ってくる必要がある。

従来、映画とは「映画館で上映される映像媒体」であるとぞんざいに括られており、今をもってその定義は完全に変容を迫られているのであるが、やはり映画とはストーリーを持つ映像媒体であると歴史的に括るべきなのではないだろうか。