a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

GOEMON (2009) - 美術一級

紀里谷和明監督

 これは世界から見た戦国日本のイメージという他なく、日本人離れした美術感覚で戦国時代を描く。甲冑は大鎧ではなく完全に西洋の甲冑。邦画をおそらく紀里谷和明はあまり観ていないだろうし、おそらく邦画を好きですらないと私は想像しているのだが、とにかく所謂邦画的な部分が見当たらない。むしろ、ところどころで私は香港映画のシーンをフラッシュバックするようであった。もしくはハリウット映画的とも思う。これは単に日本離れというだけでなく、世界に日本を紹介するポジションにある映画とも言えるわけで、評価できる。当然、邦画No.1という偏狭な視野ではなく、世界に向けた緊張感のある作品。

 一箇所だけ気に入らないのが、エンドロールでエキストラの名前を一人一人と延々と出すところである。映画鑑賞者としての私にとってエキストラとは「群衆」以上の役目は持ち得ない。であるから、クレジットでその種明かしをする必要はない。

 また、世界平和を叫びながらそのエキストラを必要以上に斬り殺して進んでいく様は、原理的な偽善者を思わせる。別にそれで良いのだ、紀里谷和明の作品の場合は。その主人公に対して生理的嫌悪感を覚える人もいるだろう。その標榜した平和を自らで勝ち取るのではなく権力者に嘆願して終わる様も、また紀里谷和明の作品らしい。