Abbas Kiarostami監督
映画化するほどのテーマだったのか、陳腐で向上性のないストーリーである。本作の良さは撮り方にある。その中でも、車のフロントガラスが青い空に反射し、まるで中にいる登場人物たちを隠すような、観客に登場人物を見たい欲求を惹起させる構図には舌を巻いた。加瀬亮は良い演技をしている。加瀬亮が殴り込みをかける、投石シーンが一番の見所に思う。これらのシーンは、加瀬亮が殴り込みをかけるにもかかわらず、加瀬亮は画面内に登場しない。つまり、加瀬亮に襲撃される立場、家の中の人間の立場からカメラを回している。カメラが、説話空間の内側に常にあり、それが傍観者の立場を許さない。