a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

The Spirit of the Beehive (1973) - 人間性の不安定な気配

撮り方に非常に凝る作品。Victor Erice監督。10年に一度しか映画を作っていない。どのカットをしてみても、単体で写真作品にできそうなような、魅力的な立体位置のセンスがある。写真作品になるというのは、被写体の生きている匂いを感じられる作品を言うのだと聞いた事がある。この映画は、登場人物すべての生きている匂いが感じられる。つまり、リアリズムがあるということだ。

今の私の持論として、それぞれのシーンが写真としても見るに堪える場合に限り、映画にリアリズムが宿るものと考えている。

本作は80年代に流行したそうだ。

遠隔からのカットが多く風景を画面に残している。

また、背面を全身で映せるような画面を残している。背中が全てを語るのか、人物の社会的な立ち位置から生活の匂いまで、わかりやすい。

映画フランケンシュタインと、蜜蜂を、独裁政府のもたらす暗雲に暗喩させて描いた作品。具体的には、出口のない労働をさせられ、もしくは殺されるといった、人権がないという不安定な立場について描いた印象がある。大人は熱気の中で報われることのない労働を続けるミツバチを書記に綴り、子供は近所に現れた脱走兵と接し映画フランケンシュタインを実体験する。

映画の中に別の映画を上演させる手法は昔からあるものの、本作は特に物語の核心部分にその映画を置いている。フランケンシュタインである。

音楽は、人をどことなく不安にさせるミステリアスな七拍子。あえて七拍子に定めているところが、映画音楽の演出効果を高めている。

映画全体を通じて、人間性の存在性のはかなさを焦点に当てていると私は見た。