Woody Allen監督。
映画好きにたまらないだろう映画は、本作や、スピルバーグの『Super 8』であろう。どちらも、映画世界の内容が現実世界へと侵入してくるストーリーである。どの映画ファンも、映画が好きなのだから、映画の内容が目の前で現実になることを想像するとたのしくなるだろう。その想像こそ、現実には起こるはずもない虚構なのだから、なおさらである。そして、脚本を書く事ができない一般視聴者にとって、唯一自由に想像して物語ることができる虚構とは、「もし映画の中に私が入ることができたら」という、気恥ずかしい孤独なロマンチシズムなのである。
映画好きの女性の前に、ある映画の脇役俳優が演じるキャラクターがスクリーンを飛び出してきて恋におちる。そのうちに、その脇役俳優もやってきて三角関係になる。ああ、書いているだけでも恥ずかしくなるような純粋でロマンチックな展開。そして、その恥ずかしさを観客の失笑に至らせないための仕組みは、主演のMia Farrowにある。同じく純粋で、そして多少間の抜けた気恥ずかしい女を演じることで、うまくその虚構の世界になじませることができた。そのため、彼女の演技はとてもよかった。逆に言い換えれば、Ceciliaのような純粋かつ従順な女の人は、我々の現実世界にはいないのである。その証拠に、私は日本でCeciliaのような女性に一回たりとも会ったことはない。
映画の開始は、軽妙な音楽とともに幕をかける。映画音楽は、冒頭に観客の気分をある程度操作することに一役買う。
好きな台詞は「座って話しているだけの映画はつまらない。」「ハートがfadee outしたわ。」である。