a-moviegoer’s diary

2014年から1日1本の映画を観ていて感想を書き溜めています。そして今年通算1000本を観ました。これからも映画の感想を溜めていきます。東京都内に住んでいます。

One Day (2011) - 7月15日は彼女たちの記念日。

Lone Scherfig監督。

ある男と女の恋愛的な半生を、一日ずつの断片で長々とみせていくという映画。その二人に興味がもてなければ、至極退屈な映画となってしまう。主演のAnne Hathaway、Jim Sturgessともに役にはまっているので、退屈ではなくおもしろい映画であると思う。

ここに、ストーリーの顛末を予感させる映画音楽の使い方があった。主に事態が悪い方向へと転落する際に、その出来事を予感させるかのような不穏な音楽を流すことがある。それは、いわば未来の展開に対する形而上の音楽で、登場人物の感情や意欲を描写するものではない。なぜなら、いかなる人間であっても偶然に転落する未来を予想することはできないからである。あくまでも映画の観客に対する、丁寧な誘導である。

しかし、もう一つの考え方もある。それは、誰かがそのストーリーを未来という立場から回想している、という可能性である。その場合であれば、その未来の出来事に対する不穏な形而上の音楽とは、回想している人間の立場から観れば過去である出来事に対する、追憶のような不安概念である。

本作の一日が、年度は違えどすべて7月15日なのは、その日が何かの節目であるからに他ならない。その節目を決めるのは、他ならぬ彼女たちなのであるし、本作はその意味で彼の追憶の中の物語なのである。